| 研究課題/領域番号 |
18K14398
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| 研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
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研究代表者 |
清水 崇史 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40636172)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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| キーワード | イネ / ファイトアレキシン / コール酸 / 品種間差 / メタボローム |
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| 研究実績の概要 |
イネにコール酸（CA）を処理すると、ファイトアレキシン（phys）生産誘導などにおいて特徴的な病害抵抗性反応を示すことから、イネはCAに対し特異的な応答機構を有すると考えられる。本研究は、イネのCA応答について既知のエリシターであるジャスモン酸（JA）応答との比較や、品種間比較を、phys定量解析やメタボローム解析、あるいはトランスクリプトーム解析を通じて行うことで、イネのCA応答について理解を深め、その分子機構の解明に取り組むものである。
2018年度には「日本晴」を用いたCA処理実験を行い、phys蓄積傾向の違いから、イネのCA応答はJA応答とは異なることを示した。一方で過去に「あきたこまち」を用いて示されていた、「CA応答時のphys生産誘導はファイトカサン類特異的である」という現象は、本研究では再現せず、イネのCA誘導的なphys蓄積様式の品種間差などが検討課題として考えられた。
2019年度には、まず「日本晴」と「あきたこまち」のCA誘導的なphys生産の比較を行った。その結果、両者ともに「ファイトカサン類の特異性」は認められなかったことから、CA処理はイネのジテルペン型physを広く誘導するものと結論付け、過去の結果との相違については栽培環境など他の要因によるものと考えた。次に、農研機構から入手した「世界のイネコアコレクション」等、64品種のイネを用いたCA応答の品種間比較解析を実施した。CA処理を行ったイネ芽生えや、器官特異的にphysを蓄積するモミを実験材料に、physの定量分析を実施した。その結果、CA処理時には最大30倍程度のphys蓄積量の品種間差や、各physの成分比の品種間差が認められた。また、品種ごとのphys蓄積傾向はCA処理区と、籾とでは異なっており、両者は異なる機構により制御されていることが示唆された。
以上の成果は第61回日本植物生理学会年会にて報告した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画当初は、2018年度から2019年度初めにかけて、すでに知られていたイネにおけるCA処理時とJA処理時のphys蓄積様式の違いに着目したトランスクリプトーム解析を実施する予定であった。しかしながら、当初想定していた「CA処理による（JA処理では観察されない）ファイトカサン特異的蓄積」について、過去の研究例の再現が得られないことから、この実験については一度中断している。このことから、この研究内容については当初の計画よりも遅れている状況と考えている。
一方で当初計画していた、多数のイネ品種を用いた、CA応答の品種間差をphysやその他の二次代謝物蓄積変動に着目して明らかにしていく研究項目については、研究実績の項目で述べた通り順調に進捗していると考えている。また、この研究により、イネのCA応答を解明する上で有用であると考えられるイネ系統が得られていることから、今後はそれらを用いた研究内容を計画している。
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| 今後の研究の推進方策 |
2019年に得られた結果をもとに、現在は引き続き同サンプルを用いたメタボローム解析や遺伝子発現解析を継続しており、CA応答がイネのphys生合成酵素遺伝子の発現や代謝応答に与える影響について追究している。この結果をもとに、既知のphys蓄積様式との相関解析などを行うことで、CA処理によりイネに引き起こされる代謝応答について網羅的に明らかにする。また、これまでのphys分析の結果を用いたGWAS解析を行い、イネのCA応答性や、phys生産制御に関わる遺伝子領域の推定を試みる。
また、2019年に行った品種間比較解析の結果から、籾でのphys生産能は有するもののCA応答的なphys生産が認められないイネ品種や、逆に籾でのphys蓄積は微量であるのに対しCA応答的には比較的高濃度にphysを蓄積するイネ品種など、特徴的な形質を示す品種を複数得ることができた。今後はこのような「特徴的なCA応答」を示すイネ品種を用い、個々のphys生産誘導に関わる遺伝子の発現解析や、植物ホルモンの分析を行い、その結果をコントロールとして用いる「日本晴」などを含め互いに比較を行うことで、イネのCA誘導的なphys生産誘導に関わる遺伝子やシグナル伝達について明らかにしていく。
また、2020年度は最終年度であるので、得られた研究成果の論文化など研究成果の公表に向けたとりまとめも行っていく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
本来2018年度に行う予定であったトランスクリプトーム解析について、2019年度についても研究計画の変更から実施が遅れているため、その分の予算が次年度使用額として生じた。今後の研究推進方策で述べた通り、現在、特徴的なCA応答性のphys蓄積傾向を示した系統についてトランスクリプトーム解析等を計画しているので、これを次年度使用額を用いて実施する予定である。
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