研究課題/領域番号 |
18K14399
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
宮本 皓司 帝京大学, 理工学部, 講師 (90721514)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジャスモン酸 / イネ / 受容体 / 病害抵抗性反応 / ファイトアレキシン |
研究実績の概要 |
イネにおける代表的な病害抵抗性反応として、抗菌性二次代謝産物であるファイトアレキシンの生産が挙げられる。イネにおけるファイトアレキシンの生産を誘導するシグナル物質として植物ホルモンであるジャスモン酸が知られている。ジャスモン酸の活性型であるジャスモン酸イソロイシンは、COI1-JAZ受容体複合体により認識される。イネに3種存在するCOI1のうち、OsCOI1cがファイトアレキシン生産の制御に関与することがこれまでに明らかになっている。本研究は、OsCOI1cを介したJA-Ile誘導的なファイトアレキシン生産の制御機構の解明を目的とする。 本年度は、昨年度から継続してイネのCOI1とJAZの相互作用の解析を行った。昨年度までに組換えタンパク質を得られていなかった3つのJAZについて、コムギ胚芽無細胞発現系を用いたタンパク質発現を試みた。その結果、これらのJAZについても組換えタンパク質を得ることができ、イネに存在する15種のJAZの全てについて組換えタンパク質発現系の構築を完了した。 得られたJAZタンパク質を用いて、OsCOI1cとの相互作用をプルダウンアッセイにより解析したところ、複数のJAZがJA-Ile依存的に相互作用した。また、残り2種のイネのCOI1(OsCOI1a, b)とJAZの相互作用もプルダウンアッセイにより解析し、OsCOI1cと比較したところ、OsCOI1cが特異的に相互作用するJAZを見出した。このJAZがイネのファイトアレキシン生産の制御において主要な役割を担う可能性が考えられる。 また、関連研究としてイネのCOI1の多重変異株の作製を継続して行い、OsCOI1aとOsCOI1bの二重変異株を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにイネのCOI1とJAZの相互作用の解析を行い、OsCOI1cと特異的に相互作用するJAZを明らかにした。OsCOI1cは、イネのJA-Ile誘導的なファイトアレキシン生産の制御において主要な役割を担うことが明らかになっている。このため、今後はOsCOI1cと特異的に相互作用するJAZの機能解析を行っていくことで、本研究課題が目標とするイネのファイトアレキシン生産を制御するジャスモン酸受容体複合体の同定を達成することが出来ると考えられる。以上のことから、本研究課題がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
イネのCOI1とJAZの相互作用について、酵母2ハイブリッド法を用いた解析も行う。プルダウンアッセイおよび酵母2ハイブリッド法の結果から明らかになったOsCOI1cと特異的に相互作用するJAZについて、その変異株や過剰発現株の作製を行う。得られた形質転換体については、形質転換当代においてジャスモン酸処理時のファイトアレキシンの蓄積を解析する。 また、イネのCOI1の多重変異株の作製を継続して行い、得られた変異株におけるジャスモン酸処理時のファイトアレキシンの蓄積を解析する。この結果から、イネのファイトアレキシン生産の制御におけるそれぞれのCOI1の寄与を詳細に明らかにする。 さらに、課題の最終年度にあたるため、原著論文や学会発表として研究成果を公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の予算はほぼ執行済みであるが、消耗品が想定よりも安価に購入できたため少額の端数が次年度への繰り越しとなった。2020年度の請求分と合わせて、分子生物学実験および生化学実験を行うための試薬などの消耗品の購入費用に充てる。
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