イネのファイトアレキシン生産に関与するジャスモン酸受容体複合体の同定

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K14399
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 宮本 皓司 帝京大学, 理工学部, 講師 (90721514)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: イネ / 植物ホルモン / 受容体 / ジャスモン酸 / 防御応答 / ファイトアレキシン

研究実績の概要

イネにおける代表的な病害抵抗性反応であるファイトアレキシンの生産を誘導するシグナル物質であるジャスモン酸イソロイシンは、COI1-JAZ受容体複合体により認識される。イネに3種存在するCOI1(OsCOI1a, OsCOI1b, OsCOI2)のうち、OsCOI2がファイトアレキシン生産の制御に関与する。本研究は、OsCOI2を介したJA-Ile誘導的なファイトアレキシン生産の制御機構の解明を目的とした。
最終年度までに、共免疫沈降法を用いたイネのCOI1とJAZの相互作用の解析を継続して行った。当初は、コムギ胚芽無細胞発現系を用いたJAZタンパク質の発現を試みたが、一部のJAZについて操作中に容易に分解または失活してしまうことが明らかとなった。そのため、JAZの部分配列に対応する合成ペプチドを用いて、COI1との相互作用を解析することにした。その結果、OsJAZaおよびOsJAZbがOsCOI12とJA-Ileの濃度依存的に相互作用する一方で、OsCOI1aおよびOsCOI1bとは相互作用しないことが明らかになった。また、ファイトアレキシン生産を制御する鍵転写因子をコードするDPF遺伝子の転写をOsJAZbが抑制することを明らかにした。以上のことから、OsCOI2-OsJAZa/bを介してイネのファイトアレキシン生産が誘導されることが示唆された。
また、イネのCOI1の多重変異株の作製を行い、全ての組み合わせの二重変異株とOsCOI三重変異株の再分化個体を得ることに成功した。これらの変異株はイネのジャスモン酸シグナル伝達機構に関する研究において有用なツールとなりうる。
さらに関連研究として、イネと同じモミラクトンを生産する蘚類ハイゴケにおいても解析を行い、オキソフィトジエン酸およびその類縁体を介したシグナル伝達機構が存在することを明らかにした。

研究成果

• [雑誌論文] Deciphering OPDA signaling components in the momilactone-producing moss Calohypnum plumiforme (2021)
  • 著者名/発表者名: Hideo Inagaki, Koji Miyamoto, Noriko Ando, Kohei Murakami, Koki Sugisawa, Shion Morita, Emi Yumoto, Miyu Teruya, Kenichi Uchida, Nobuki Kato, Takuya Kaji, Yousuke Takaoka, Yuko Hojo, Tomonori Shinya, Ivan Galis, Akira Nozawa, Tatsuya Sawasaki, Hideaki Nojiri, Minoru Ueda, Kazunori Okada
  • 雑誌名: Frontiers in Plant Science 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.3389/fpls.2021.688565
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] イネにおけるCOI1-JAZ受容体複合体の機能解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 稲垣 秀生, 湯本 絵美, 朝比奈 雅志, 内田 健一, 林 謙吾, 加治 拓哉, 高岡 洋輔, 上田 実, 岡田 憲典, 山根 久和, 宮本 皓司
  • 学会等名: 第６２回植物生理学会年会
• [学会発表] イネにおけるジャスモン酸イソロイシン受容体COI1-JAZの機能分化に関する研究 (2020)
  • 著者名/発表者名: 稲垣 秀生, 湯本 絵美, 朝比奈 雅志, 内田 健一, 林 謙吾, 加治 拓哉, 高岡 洋輔, 上田 実, 岡田 憲典, 山根 久和, 宮本 皓司
  • 学会等名: 植物化学調節学会第５５回大会