ゲニステインによるNAMPTの発現調節機構の詳細なメカニズムを解析した。昨年度はゲニステインの標的タンパク質としてPHB1を見出したが、PHB1に結合したゲニステインがどのようにしてNAMPTの発現を制御しているかまでは不明であった。PHB1をノックダウンした脂肪細胞株3T3-L1細胞において、ゲニステイン添加による細胞内シグナル伝達系を解析した。その結果、ゲニステインはERKのリン酸化レベルを増加し、そのリン酸化レベルの増加は、PHB1のノックダウンで解除された。さらに、ゲニステインによるERKの活性化は、転写因子C/EBPβの188番目のThrのリン酸化を惹起することでC/EBPβのタンパク質安定性を向上した。C/EBPβがNAMPTの発現制御に関与しているのかをNamptのプロモーター領域を組み込んだルシフェラーゼレポーターアッセイで検討した。3T3-L1細胞にC/EBPβを一過的に高発現させるとNamptのプロモーター活性は増加し、同時にゲニステインを添加することで活性は相乗的に亢進した。一方、ERKによるリン酸化を受けない変異体C/EBPβを高発現させた3T3-L1細胞では、ゲニステインによるNamptのプロモーター活性の亢進は示されなかった。以上の結果から、PHB1に結合したゲニステインは、ERKの活性化を介してC/EBPβの安定化を向上し、それによってNAMPTの遺伝子発現が亢進することが明らかとなった。 ゲニステインと他の天然由来イソフラボンでNAMPTの発現・分泌能を比較したところ、ゲニステインよりも効果が強い成分としてフォルモノネチンを見出した。今後、フォルモノネチンによるNAMPT分泌効果を個体レベルで検証する必要がある。
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