研究実績の概要 |
世界中で食品添加物を使用することは一般化されている。しかし近年、食品添加物の安全性が危惧され、安全性基準の見直しが進められており、毒性評価の開発が急務とされている。そこで動物を用いないで食品添加物の毒性を判定できる、新しい簡易的な測定法の開発に着手した。 フローサイトメーターを用いて、ポストハーベスト農薬として使用されている、ビフェニル、チアベンダゾール等の防カビ剤に焦点を当てて、胸腺細胞の細胞毒性を調べた。防カビ剤に焦点を当てた理由としては、防カビ剤は人体への毒性が幅広く報告されており、さらに防カビ剤がアレルギーを誘導する可能性もすでに報告されているためである。防カビ剤の毒性を調べたところ、特にビフェニルにおいて細胞死が強く見られた。さらにビフェニルを投与した細胞を詳細に調べてみると、細胞内のカルシウム、亜鉛ともに増加していることが明確になった。そこで、細胞内の亜鉛を取り除く薬剤であるTPEN(N,N,N,N-Tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine)をビフェニルとともに投与したところ、ビフェニルによる細胞死を抑制した。さらに細胞外カルシウムを除くことによっても、ビフェニルの毒性を軽減できた。以上の結果から、ビフェニルの毒性は、細胞内の亜鉛が増加すること、細胞外のカルシウムが細胞に流入してくることで、細胞に対して複数の要因をビフェニルが誘導し、細胞に対して毒性をもたらすことを明らかにした。さらにビフェニルは防カビ剤のなかでも毒性が強いことが言われており、本結果は動物実験で報告された結果と一致した。したがってフローサイトメーターを用いた細胞毒性試験は、食品添加物の毒性を判定する測定法になりうることを明確にした。
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