現在世界中で食品添加物は一般化されているが、規定量の範囲内でも体内への影響が認められ、食品添加物の安全性が危惧されている。本研究はフローサイトメーターを用いてラット胸腺細胞に対する食品添加物または食品に含まれる化合物の影響を調べた。 アゾキシストロビンは幅広い用途を持つ殺菌剤である。しかしヒトにおけるアゾキシストロビンの毒性作用は報告されていない。そこでアゾキシストロビンによるラット胸腺細胞に対する影響を調べた。3~30 uMのアゾキシストロビンは、ラット胸腺細胞の細胞内亜鉛濃度を上昇させた。この増加は、細胞外亜鉛の流入と細胞内亜鉛の放出によるもので、細胞の亜鉛ホメオスタシスに影響することが明確になった。実際使用に関しては現在の規定量で安全ではあるが、長期摂取によって体内に蓄積した場合に、体内に影響を及ぼす可能性が考えられ、今後詳細に調べる必要がある。 アルギネチンは、ペクチンを含む食品の調理工程の中で生成される。しかし、アルギネチンの生物学的相互作用と毒性はまったく知られていない。そこでアルギネチンのラット胸腺細胞への影響を調べた。アルギネチンは非タンパク質チオールの細胞含有量を増加させ、細胞内亜鉛を上昇させた。細胞内亜鉛のキレート化は、非タンパク質チオールに対するアルギネチンの効果を減少させ、細胞外亜鉛のキレート化は、アルギネチンによる細胞内亜鉛の上昇をほぼ完全に減少させた。さらにアルギネチンは、過酸化水素によって誘発される酸化ストレスおよびカルシウムイオノフォアによるカルシウム過負荷から細胞を保護した。本研究からアルギネチンの有用性が示唆された。 本研究からフローサイトメーターを用いた細胞毒性試験は、高感度で、しかも食品添加物または食品に含まれる化合物の毒性や作用機構が明確になり、毒性を調べるのに有効であることが明確になった。
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