研究課題/領域番号 |
18K14410
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研究機関 | 梅花女子大学 |
研究代表者 |
守田 愛梨 梅花女子大学, 食文化学部, 助教 (60806256)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 介護食品 / 官能評価 / QOL / 粘弾性 / 味 / 美味しさ |
研究実績の概要 |
一定量のだし味を添加し、粘弾性を6パターンに調整したゼリーを供試試料とした。供試試料は、クリープメータによるテクスチャー測定により、粘弾性特性を測定した。また、梅花女子大学食文化学部の学生および教員を対象にした官能評価試験により、官能評価スコアを収集した。得られた供試試料の粘弾性特性と官能評価スコアに統計解析を適用して、それらの相互関連性を調べた。その結果、①ゼリーの粘弾性によって有意にだし味強度の感じ方が変わること、②官能評価者の年齢、性別等の属性の違いによって官能評価における好みの傾向が異なることなどが分かった。これらのことから、研究課題である介護食品としてのゼリー食品は、喫食者の嚥下レベルに適した粘弾性のゼリーを調整するだけではなく、味の感じ方の違いを考慮して調整する必要性があるといえる。美味しくゼリーを喫食するためには、適切な粘弾性を有し、かつ、だし味強度も適切に感じられるだし添加量の許容範囲を特定することが重要であると考えられる。 他方、供試試料6種に対して、GC/MSによる香気成分の定量分析とにおい嗅ぎ分析による定性分析を実施した。その結果、香気成分の定量分析では、添加しただしの量は全て同量であるにも関わらず、粘弾性の特徴の違いによって有意に検知された香気成分の量が異なる試料があった。またにおい嗅ぎ分析では、供試試料に含まれるゲル化剤の配合割合の差によって匂いの強く感じられる成分があったり、反対に全く匂いを感じられない成分が存在することが明らかとなった。このことから、供試試料の粘弾性はそのテクスチャーに影響を及ぼすだけではなく、香りの感じ方にも影響を及ぼすことが分かった。したがって、ゼリー食品の最適設計には適切な粘弾性の確保と共に、その粘弾性において美味しいと感じられる香気成分の発散すなわちフレーバーリリースの観点からの品質評価が必要であることが裏付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テクスチャ試験は当初の計画通り実施をすることができた。しかしながら官能評価については新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、2020年度には一度も実施することができなかった。また今後も当面の間は実施が困難であることが予想される。そのため、今後はこれまでに取得してある官能評価データをもとにして研究を遂行する計画である。 また、研究代表者が産休・育休の取得をし2020年度8月以降研究を一時中断しているために、2020年度には研究成果の発表を行わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得した官能評価データ、テクスチャ試験、香気分析で得たデータをもとに、最終的な介護用ゼリー食品の最適品質設計に必要な数理モデルを構築する。具体的には、2020年度までの研究成果によって明らかとなった、ゼリーの粘弾性によって有意にだし味強度の感じ方が変わること、官能評価者の年齢、性別等の属性の違いによって官能評価における好みの傾向が異なること、粘弾性はそのテクスチャーに影響を及ぼすだけではなく、香りの感じ方にも影響を及ぼすことの3点を統計解析モデルの構築の際のキー因子としたモデリングを実施する。そのモデリングにより得られたモデルは、梅花女子大学の女子大生もしくは教職員による美味しさ評価基準が適用されているものになる。そのモデルにシミュレーション機能を適用して、数理的に喫食者が介護食品を喫食した時の官能評価スコアをシミュレートする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大防止のための対策として、2020年度は官能評価を全く実施しなかったので、官能評価時に必要な消耗品への支出がなかった。また2020年度に参加を予定していた海外学会での発表を中止したので、学会参加費用の支出がなかった。さらに、2020年8月以降は研究代表者が産休・育休を取得したので研究の遂行が一時中断されている状態であるため、次年度使用額が生じている。 次年度の研究代表者の研究再開後は、まず、ライセンスが切れているJMP PROの更新を行って研究の最終目的成果物であるモデルを作成する。また、研究成果を日本食品工学会誌(2019年発表論文の続報として)とFood Science誌に投稿発表するための論文掲載料と英文論文に関しては英文校閲費用として支出する計画である。
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