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2018 年度 実施状況報告書

機能性食品成分-GPR30システムによる腸管免疫を介した血管機能改善機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K14414
研究機関東京農工大学

研究代表者

北野 隆司 (大植隆司)  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任講師 (90791583)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード腸内細菌代謝物 / エクオール / GPR30 / 代謝性疾患
研究実績の概要

肥満症・代謝性疾患の予防・改善の新たな標的として腸内環境が注目され、特に、食品成
分由来の腸内細菌代謝物の重要性が明らかになりつつある。近年、大豆イソフラボン(Daidzein:DZ)の新たな生体調節機能として、心血管病(CVD)の改善効果が臨床研究にて指摘されている。その分子実体の一つに大豆イソフラボン由来の腸内細菌代謝物・エクオール(Equol:EQ)の存在が示唆されているが、その詳細な作用機序は未解明である。
植物性エストロゲンアナログであるDZには、エストロゲンと同様、心筋梗塞や脳梗塞等のリスク軽減効果が報告されている。その作用機序として、エストロゲン受容体(ER)を介したLDL の減少とVLDL/HDL の増加による脂質異常改善作用や血圧降下作用等が示唆されている。また、エストロゲンの機能発現に関して、従来のERを介した作用に加え、近年、新規エストロゲン受容体である細胞膜受容体・GPR30 による新たな作用機序が指摘されている。
そこで本研究では、DZやEQによるCVDリスク改善効果の新規な分子基盤を解明することを目的に、特に腸管におけるエストロゲン受容体GPR30に着目し、『GPR30が食事由来エストロゲンアナログであるDZ及びEQの感知を司る栄養素センサーとして機能し、腸管を起点とした臓器連関による血管組織のVascular remodelingに関与することで、CVDリスク改善効果に寄与するのではないか』との作業仮説を検証した。
今年度は、細胞試験にて植物性エストロゲンであるDZやEQなどが細胞膜上エストロゲン受容体GPR30の新規リガンドとなるのか、さらには、動脈硬化改善作用におけるGPR30の機能的意義の解明を動物試験にて試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

エストロゲン受容体GPR30に対する大豆成分由来新規リガンドの同定、さらにはGPR30による自然免疫細胞(単球/腸管マクロファージ)の機能制御を介して血管組織のVascular remodelingに関与するのかについて検討する一環として、最初にGPR30リガンドスクリーニング系の構築を試みた。今年度、Flp-In T-Rex HEK293細胞によるGPR30強制発現系の構築が完了しており、大豆成分由来新規リガンドの結合能の評価を進めている。ポジティブコントロールとして、内因性エストロゲン(17β-estradiol; E2)及び合成リガンドG-1(GPR30 agonist)を用い、大豆イソフラボン(Daidzein:DZ)とその腸内細菌代謝物・エクオール(Equol:EQ)のGPR30への親和性に関して、細胞内セカンドメッセンジャーを評価指標として検討している。GPR30下流シグナルについては、評価系あるいは発現組織の違いやcAMP産生機序および細胞内Ca2+濃度に応じて、共役するGタンパク質(Gi, Gq, Gs )に関する統一的な見解が得られていない。従って、我々はDZおよびEQの結合に伴う下流シグナルに関して多面的な解析を進めている。
次に、腸管免疫-血管機能を基軸に臓器連関を介した動脈硬化症改善におけるGPR30の機能的意義についてモデルマウスを用いて検討する一環として、Gpr30遺伝子欠損マウスの作製を試みた。今年度、ゲノム編集(CRISPR/Cas9)によるGpr30遺伝子欠損を導入したファウンダーマウスより、現在、ホモ欠損型系統の樹立が完了している。

今後の研究の推進方策

大豆イソフラボン(Daidzein:DZ)とその腸内細菌代謝物・エクオール(Equol:EQ)の作用によるGPR30 を介した腸管粘膜免疫の制御機構や腸内細菌叢の菌組成と機能特性(EQ 産生能等)を検討し、腸管免疫-血管機能を基軸とした臓器連関によるVascular remodeling の作用機序を解明することで、動脈硬化発症・進展における新規の分子基盤を明らかにする。
今年度に作出したGpr30遺伝子欠損マウスやGPR30リガンドスクリーニング系を駆使して、腸管の自然免疫細胞(マクロファージ)におけるGPR30の機能解析(細胞分化、遊走能等)に加えて、血管内皮細胞におけるGPR30の機能解析(炎症/抗炎症指標・eNOS活性化・接着分子発現等)を実施し、動脈硬化進展に関する新規の作用機序を見出す予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 腸内細菌代謝産物と生体機能~循環器・代謝疾患の治療への応用2019

    • 著者名/発表者名
      清水秀憲、大植隆司、木村郁夫
    • 雑誌名

      CARDIAC PRACTICE

      巻: 29 ページ: 23-27

  • [雑誌論文] Role of serum myostatin in the association between hyperinsulinemia and muscle atrophy in Japanese obese patients.2018

    • 著者名/発表者名
      Tanaka M, Masuda S, Yamakage H, Inoue T, Ohue-Kitano R, Yokota S, Kusakabe T, Wada H, Sanada K, Ishii K, Hasegawa K, Shimatsu A, Satoh-Asahara N
    • 雑誌名

      Diabetes Research and Clinical Practice

      巻: 142 ページ: 195-202

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.diabres.2018.05.041

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chemokine (C-X-C motif) ligand 1 is a myokine induced by palmitate and is required for myogenesis in mouse satellite cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Masuda S, Tanaka M, Inoue T, Ohue-Kitano R, Yamakage H, Muranaka K, Kusakabe T, Shimatsu A, Hasegawa K, Satoh-Asahara N
    • 雑誌名

      Acta Physiologica (Oxf)

      巻: 222 ページ: e12975

    • DOI

      https://doi.org/10.1111/apha.12975

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 食物繊維由来腸内細菌代謝物、短鎖脂肪酸と宿主代謝制御2018

    • 著者名/発表者名
      平さつき、渡辺啓太、大植隆司、木村郁夫
    • 雑誌名

      ルミナコイド研究

      巻: 22 ページ: 53-62

    • 査読あり
  • [雑誌論文] プロバイオティクス・プレバイオティクス臨床応用の現状 肥満、2型糖尿病2018

    • 著者名/発表者名
      大植隆司、平さつき、木村郁夫
    • 雑誌名

      臨床と研究

      巻: 95 ページ: 51-56

  • [雑誌論文] 短鎖脂肪酸の産生機序と生理機能調節2018

    • 著者名/発表者名
      大植隆司、平さつき、木村郁夫
    • 雑誌名

      食品機能性脂質の基礎と応用

      巻: 1 ページ: 76-85

  • [学会発表] Beneficial metabolic effects by dietary short-chain fatty acids2018

    • 著者名/発表者名
      Taira S, Shimizu H, Ohue R, Kimura I
    • 学会等名
      APNNO 2018 BIENNIAL CONFERENCE
    • 国際学会
  • [学会発表] 細胞膜上性ステロイドホルモン受容体を介した代謝機能制御2018

    • 著者名/発表者名
      大植隆司
    • 学会等名
      生理学研究所2018年度研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 食由来成分を基質とした腸内細菌代謝物による宿主のエネルギー代謝制御2018

    • 著者名/発表者名
      北野隆司
    • 学会等名
      第36回内分泌代謝学サマーセミナーYECシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 短鎖脂肪酸の直接摂取が代謝機能改善に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      平さつき、清水秀憲、大植隆司、木村郁夫
    • 学会等名
      第36回内分泌代謝学サマーセミナー
  • [学会発表] 日本人2型糖尿病におけるPICRUSt予測メタゲノム解析を用いた腸内細菌叢プロファイルと宿主の糖代謝との機能的連関2018

    • 著者名/発表者名
      浅原哲子、北野隆司、井上亮、塚原隆充、田中将志、井上隆之、横田繁史、村中和哉、山陰一、日下部徹、長谷川浩二、島津章
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 肥満患者における骨格筋由来液性因子・マイオスタチンを介した耐糖能悪化と骨格筋萎縮2018

    • 著者名/発表者名
      田中将志、増田慎也、山陰一、井上隆之、北野隆司、横田繁史、村中和哉、日下部徹、和田啓道、真田樹義、石井好二郎、長谷川浩二、島津章、浅原哲子
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 肥満糖尿病モデル動物における低炭水化物食とSGLT2阻害薬が体組成および糖脂質代謝に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      横田繁史、日下部徹、田中将志、井上隆之、北野隆司、村中和哉、山陰一、島津章、浅原哲子
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] ω3系多価不飽和脂肪酸由来乳酸菌代謝物によるGPR40を介した抗炎症性M2型マクロファージの分化誘導と腸内環境制御2018

    • 著者名/発表者名
      北野隆司、後藤剛、岸野重信、小川順、日下部徹、島津章、河田照雄、木村郁夫、浅原哲子
    • 学会等名
      第22回日本心血管内分泌代謝学会学術総会
  • [学会発表] 肥満・糖尿病における新規認知症予知指標・TREM2の病態意義―国立病院機構多施設共同研究―2018

    • 著者名/発表者名
      浅原哲子、田中将志、山陰一、井上隆之、北野隆司、村中和哉、荒木里香、的場ゆか、齋藤美穂、栗田征一郎、米澤一也、田中剛史、鈴木雅裕、澤村守夫、西村元伸、小鳥真司、日下部徹、島津章
    • 学会等名
      第22回日本心血管内分泌代謝学会学術総会

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公開日: 2019-12-27  

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