研究課題/領域番号 |
18K14415
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
村上 太郎 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (70393254)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小麦グリアジン / プロアントシアニジン / 高分解能質量分析装置 / 人工消化液 |
研究実績の概要 |
小麦中のグリアジンはセリアック病や運動誘発アナフィラキシーを引き起こす主要なアレルゲンである。本研究では果実や種実などの食品からグリアジン中のエピトープとの結合に関与するプロアントシアニジンを探索し、プロアントシアジンが結合したグリジアンの消化吸収後のアレルゲン性について明らかにすることを目的としている。 これまでに小麦グリアジンとの結合が確認された果実や種実などの各試料からプロアントシアニジンを抽出し、Phologlucinolによって分解した。プロアントシアニジンの分解産物は高速液体クロマトグラフィーによって分離後、高分解能飛行時間型質量分析装置(LC-QTOF/MS) によって分析した。得られたマススペクトルから各試料中のプロアントシアニジン中の基本骨格を確認したところ、主要な基本骨格として報告されているEpicatechinやcathechinが確認された。また、一部の試料ではガロイル基による修飾やA環の水酸基がC環の2 位に結合したエーテル結合を含むA タイプのプロアントシアニジンが確認された。また、各化合物のプリカーサーイオンの精密質量とその強度を多変量解析によって解析することによって、プロアントシアニジンの分解産物による植物種ごとのプロアントシアニジンの差異解析が可能であることが示唆された。 T細胞の応答に関与するグリアジンのエピトープペプチドを含む33残基のペプチドの合成を依頼し、LC-QTOF/MSによる測定条件の検討を行った。タンパク質の消化酵素について検討を行った結果、小麦グリアジンはキモトリプシンによる分解によって特異的なペプチドフラグメントが検出可能であった。次に、人工消化液に合成したペプチドを添加して測定を行ったところ、ペプチドフラグメントの検出ができなかったため、消化液由来の夾雑成分による測定阻害が起こっていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は高分解能飛行時間型質量分析装置による分析法についての検討を行い、プロアントシアニジンの分解産物による植物種の差異分析が可能であることが示唆されたため、次年度以降に検討した方法を応用し、小麦グリアジン由来のペプチドに結合するプロアントシアニジンのスクリーニングのために本方法を応用する。小麦グリアジン由来ペプチドについては特異的なペプチドの検出が可能であったが、消化液からの検出が困難であったため、次年度に精製法についての検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
植物試料中のプロアントシアニジンについては分解産物による植物種の系統解析が可能であることが示唆されたため、次年度は試料数を増やして検討する。人工消化液中の小麦グリアジン由来のペプチドの検出が困難であったため、精製法を検討する必要がある。また、必要に応じて質量分析以外の酵素免疫学的な検出法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度生じた未使用額は少額であるため、次年度の物品費として使用する予定である。
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