本研究は、腸管オルガノイドを用いて二次胆汁酸が腸管上皮幹細胞に及ぼす影響を解明することを目的とする。昨年度までに、小腸オルガノイドおよび大腸オルガノイドを用いて、リトコール酸が腸管上皮幹細胞に与える影響を調べるとともに、リトコール酸の摂取がマウスの腸管上皮に与える影響を解析してきた。昨年度の結果から、リトコール酸の添加により大腸オルガノイドの分化が促進される可能性があることがわかっていた。そこで今年度は、リトコール酸が大腸オルガノイドの細胞増殖に与える影響を調べるとともに、各種細胞マーカーの遺伝子発現に与える影響を調べた。リトコール酸を添加して誘導した大腸オルガノイドに5-ethynil-2'-deoxyuridine (EdU)を添加し、2.5時間培養後、細胞を回収し、フローサイトメーターを用いて解析した。その結果、リトコール酸の添加により、対照に比べEdU陽性細胞の割合が減少することがわかった。また、リトコール酸の添加はL細胞マーカーであるGcgの発現を有意に上昇させることがわかった。続いて、リトコール酸の摂取がマウス大腸上皮の幹細胞に与える影響を調べた。昨年度のLgr5-EGFPノックインマウスを用いた試験から、リトコール酸の摂取によりマウス大腸上皮におけるLgr5陽性細胞の割合が減少する傾向があることがわかっていたが、今年度の追加の試験によりリトコール酸の摂取によりLgr5陽性細胞が有意に減少すること、また、大腸上皮のオルガノイド形成能が有意に抑制されることが明らかになった。以上から、リトコール酸は大腸上皮においては腸管上皮幹細胞を減少させることが明らかになった。
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