既存の食品製造工業では、多くの場合、経験的な知見をもとに試行錯誤的に加工方法・条件を決めてきた。近年、加工食品に対して、喫食時の五感での受感(美味しさ)のみならず、保健のための生理機能性が求められている。研究代表者は、加工食品に応じた食品素材、加工方法・条件を論理的に決め、喫食時の受感や生理機能性等を含む品質を自在に制御できる学術的手法の確立を最終的に目指している。そこで本研究では、麺を対象試料として、加工食品内部の微細構造から、喫食時の食感および抗肥満性等を予測可能にするための学術基盤の形成を目的とした。 2019年度までに、人工知能(AI)を用いることで、透明蛍光化法で計測した麺について、麺内部の3次元微細構造から食感を予測できることを示した。さらに、麺内部の微細で複雑な3次元構造をソフトウェア上でレンダリングできるようにすることで、AIが食感を予測するうえで強く認識した3次元微細構造の特徴を可視化できるようにした。本年度は、より高い精度で喫食時の食感と抗肥満性等を予測できるようにするための改良を行った。特に、研究代表者らが開発したSoROCSを用いた食品試料の透明化法の改良、ならびに微細構造から食感等を予測する際のAIのアルゴリズムの改良を重点的に実施した。 なお、SoROCSを用いた透明蛍光化法について報告した論文がNature Communications誌に掲載され、さらにその論文が同誌のBiotechnology and methods部門におけるEditors’ Highlightsに選出された。
|