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2018 年度 実施状況報告書

PPARγ活性化食品素材・因子を利用して得られる脂質筋は健全な骨格筋か?

研究課題

研究課題/領域番号 18K14424
研究機関北里大学

研究代表者

落合 優  北里大学, 獣医学部, 講師 (80750546)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード骨格筋 / 脂質 / 黒ショウガ / インスリン抵抗性 / PPARγ / メトキシフラボノイド
研究実績の概要

骨格筋における脂質蓄積は、インスリン抵抗性を惹起するが、一方で運動を鍛錬されインスリン感受性が高いアスリートの骨格筋にも見られる。本研究では、骨格筋における脂質蓄積を促す可能性を有する食品成分のスクリーニングを実施した。その方法として、脂質合成に関与するPPARγのリガンド結合能(活性指標)を指標とした。その結果、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)および黒ショウガに含まれるメトキシフラボノイド類がPPARγのリガンド結合能を活性化する結果をin vitroにて得た。特に、黒ショウガのエタノール抽出物やジメトキシフラボン(DMF)で比活性が高くなる結果を得た。
In vivoでは、2型糖尿病NSYマウスに黒ショウガのエタノール抽出物を高脂肪高ショ糖食に加えて給餌し、2型糖尿病に関する指標を検討した。黒ショウガおよびそのエタノール抽出物群は耐糖能改善作用と骨格筋脂質含量をやや高める結果を得た(肝臓においては脂質蓄積の抑制)〔英文誌1報(査読有)及び和雑誌2報〕。その結果について、PPARγのリガンドアンタゴニストであるBADGEを併用投与しても作用は解除されず、耐糖能に関してはより強く改善された。一方で、エタノール抽出物の中心化合物である5,7-DMFの投与により、耐糖能は改善されたが、肝臓および骨格筋における脂質蓄積は抑制された。脂肪酸の不飽和化指標(SCD)についても同様に5,7-DMFの投与により抑制された。
したがって、PPARγアゴニスト活性を有する黒ショウガのエタノール抽出物にはPPARγのみならず脂質代謝に関する他の遺伝子・タンパク質の調節を活性化させる働きを有することが示唆された(投稿中)。黒ショウガのエタノール抽出物中の5,7-DMF以外の化合物のPPARγに対する効果を検討し、PPARγアゴニスト活性を有する化合物の探索が課題である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

PPARγを活性化させる食品素材として、黒ショウガを候補素材に挙げ、そのエタノール抽出物にPPARγリガンド結合能の比活性を上げることや耐糖能を改善すること、同抽出物の機能性成分として5,7-ジメトキシフラボン(DMF)があることを報告した。しかしながら、in vitroにおけるPPARγリガンド活性化が必ずしもin vivoにおけるPPARγ活性化にはつながらず、黒ショウガのエタノール抽出物にはPPARγだけではなく、対照的な作用を司るタンパク質を活性化させる作用を有する可能性が示唆された。現在は、黒ショウガのエタノール抽出物に含有されるメトキシフラボノイド(特に、5,7-DMF, 3,5,7-トリメトキシフラボン、5,7,4-トリメトキシフラボン、3,5,7,4-テトラメトキシフラボン)を中心に化合物単位でPPARγリガンド結合能の評価を行い、機能性を有する化合物については培養細胞系(骨格筋、脂肪組織由来)にて検討をしている。
ポリメトキシフラボンを中心としたポリフェノールに着目して植物素材からスクリーニングした研究であるが、黒ショウガのエタノール抽出物中の活性化合物の確定作業にやや時間を有している。しかし、化合物や評価試薬類については入手しているため、今後評価対象とする他の化合物を合わせて一斉に評価を行うことで問題は解決できるものと考えている。

今後の研究の推進方策

前述したが、今後の研究の方針としてまず黒ショウガのエタノール抽出物に含有されるメトキシフラボノイドのPPARγリガンド結合能(in vitro)および培養細胞系(特に、マウス骨格筋由来C2C12株)に及ぼす影響について化合物単位で評価していくことに急いで取り掛かる。メトキシフラボノイド類によるPPARγリガンド結合能の活性化が確認されれば化合物単位でin vivoにおける骨格筋PPARγの遺伝子発現の促進効果を検討する予定である。以上のようにして、黒ショウガのエタノール抽出物中の活性化合物の確定に取り掛かる。
また、PPARγリガンド結合能を活性化する化合物には多価不飽和脂肪酸が挙げられる。しかしながら、不飽和脂肪酸の代謝物について検討した例はなく、2型糖尿病の発症によって変化する水酸基を有する不飽和脂肪酸の作用は検討されていない。水酸基を有する不飽和脂肪酸は多種類存在するが、20種類ほどの水酸化不飽和脂肪酸、および一般的な不飽和脂肪酸を化合物試薬ベースで入手している。メトキシフラボノイドと合わせてPPARγリガンド結合能(in vitro)および培養細胞系(特に、マウス骨格筋由来C2C12株)に及ぼす影響の評価を行い、候補素材となる成分を挙げていく予定である。
以上のようにして、候補素材が2型糖尿病モデルのマウスの骨格筋脂質代謝や耐糖能に及ぼす影響とを相関させながら、骨格筋に脂質(特に、不飽和脂肪酸)が蓄積されることが耐糖能をはじめとしたヒトの健康に対して有益か否かについて結論付けていく予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Kaempferia parviflora Ethanol Extract, a Peroxisome Proliferator‐Activated Receptor γ Ligand‐binding Agonist, Improves Glucose Tolerance and Suppresses Fat Accumulation in Diabetic NSY Mice2019

    • 著者名/発表者名
      Ochiai Masaru、Takeuchi Toshiki、Nozaki Tsutomu、Ishihara Ken‐o、Matsuo Tatsuhiro
    • 雑誌名

      Journal of Food Science

      巻: 84 ページ: 339~348

    • DOI

      10.1111/1750-3841.14437

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 2型糖尿病改善作用を有するPPARγ活性化食品因子の探索2018

    • 著者名/発表者名
      落合 優
    • 雑誌名

      メディカル・サイエンス・ダイジェスト

      巻: 44 ページ: 295~298

  • [雑誌論文] 2 型糖尿病改善作用を有するPPARγ 活性化食品素材2018

    • 著者名/発表者名
      落合 優
    • 雑誌名

      アグリバイオ

      巻: 22 ページ: 805~808

  • [雑誌論文] 黒ショウガを利用した2型糖尿病改善作用に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      落合 優
    • 雑誌名

      BIO CLINICA

      巻: 33 ページ: 1287~1291

  • [学会発表] PPARγ agonists from Kaempferia parviflora improve glucose and fat metabolism in Mice2018

    • 著者名/発表者名
      Masaru Ochiai、Tsutomu Nozaki
    • 学会等名
      Experimental Biology 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 黒ショウガ(Kaempferia parviflora)による2型糖尿病モデルNSYマウスの糖脂質代謝改善作用に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      落合優、野崎勉、石原健夫
    • 学会等名
      第65回日本食品化学工学会

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公開日: 2021-12-27  

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