研究実績の概要 |
骨格筋における脂質蓄積はインスリン抵抗性を惹起するが、一方でインスリン感受性が高いアスリートの骨格筋にも見られる。そのため、食品因子を利用して骨格筋の脂質蓄積を促す可能性について検討を行った。 先行研究では、脂質合成に関与するPPARγタンパク質のリガンド結合能を検討し、黒ショウガに含まれるメトキシフラボノイド類の中でも5,7ジメトキシフラボン(5,7-DMF)の比活性が高くなる結果を得た。 本研究では、2型糖尿病マウスに0.02%の5,7-DMFを混合した高脂肪食を8週間給餌し、2型糖尿病に関する指標および脂質代謝物の含量について検討した。その結果、耐糖能は改善され、骨格筋における脂質蓄積および脂肪酸不飽和化活性が抑制されることを新規に見出した。また、生体内代謝物の網羅的解析により、5,7-DMFを投与することによって、肝臓および骨格筋におけるフォルモネチン(5,7-DMFと構造類似するフラボノイド化合物)含有量が増加することを見出した。しかしながら、PPARγの活性化で期待されるアディポネクチン濃度が上昇する結果は得られなかった。 また、PPARγの活性作用を有する化合物として多価不飽和脂肪酸があるため、不飽和脂肪酸の代謝物の中でも健常人血清に高含有される複数の脂肪酸結合不飽和脂肪酸の評価をin vitroにて実施したところ、化合物9-PAHSAに強い活性が認められた。9-PAHSA、5,7-DMFおよびフォルモネチンを2型糖尿病マウスに3週間給餌投与したが、耐糖能改善作用や血漿および組織における2型糖尿病の改善作用は認められなかった。 以上より、PPARγリガンド結合能を指標としたスクリーニングの結果、5,7-DMFおよび9-PAHSAに強いPPARγ活性が得られた。2型糖尿病マウスを用いた検討を行ったが、2型糖尿病症状の明確な改善点を見出すまでには至らなかった。
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