研究課題/領域番号 |
18K14433
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高崎 寛則 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50612157)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 転写因子 / 発生 / 種子 / 細胞伸長 |
研究実績の概要 |
本研究では農産物収量の増産を目的として、応募者が単離した植物細胞伸長に関与するbHLH型転写因子の機能を解明し、穀類の可食部である種子のサイズを大きくする「種子肥大化技術」の開発を目指している。植物ホルモンの1つであるジベレリン(GA)は細胞の伸長を促進する。応募者はこれまでにイネの幼苗基部細胞分裂組織でGA誘導性のbHLH型転写因子を単離した。本研究では、このbHLH型転写因子のシロイヌナズナの4つの相同遺伝子について解析を進めている。これまでに、シロイヌナズナにおけるGA誘導性bHLH型遺伝子が葉の分裂期から伸長期への移行期で発現誘導されることが示されているが、その詳細な機能や誘導メカニズムは明らかになっていない。 シロイヌナズナの4遺伝子は機能重複している可能性が示唆されている。これらの遺伝子の機能を理解するために、多重変異体の解析が有効である。しかし、4遺伝子のうち2遺伝子が3番染色体上で隣合っていることが既存の変異体の掛け合わせによる4重変異体の作成を困難なものにしている。そこで、3重変異体を母体とし、ゲノム編集技術を用いて4重変異体を得た。 機能重複した4つの遺伝子の働きを調べるために、転写活性の抑制ドメインを付与したキメラリプレッサーを植物に導入した植物を得た。 4遺伝子が本来発現している組織の詳細を明らかにするために、4遺伝子それぞれの遺伝子上流配列(プロモーター)とGFP遺伝子を組み合わせたコンストラクトを作成し、植物へ導入した。 得られた変異体、形質転換体と野生型で細胞伸長過程を比較することで、4遺伝子が細胞伸長へ果たす機能を明らかにする。明らかとなった機能を利用して4遺伝子をそれぞれ種子特異的に過剰発現させることで、種子の肥大化技術の開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物細胞伸長メカニズムを明らかにし、種子肥大化技術を開発するために、細胞伸長に関わる4遺伝子の機能欠失変異体を得た。また、4遺伝子のキメラリプレッサー導入株について、T1種子を選抜した。4遺伝子が本来発現している組織を明らかにするために、4遺伝子それぞれのプロモーターとGFP遺伝子を組み合わせたコンストラクトを作成し、植物へ導入後、強いGFP蛍光の観察されるラインを選抜した。これらの研究材料から細胞伸長のメカニズムの解明を目指す。種子肥大化技術の開発に必要な種子特異的に高発現するプロモーターについて、詳細に発現を解析し、種皮で強く発現し、その他の組織で発現しないことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた4重変異体、キメラリプレッサーの葉、種子の細胞の大きさについて詳細な解析を行い、細胞伸長過程における4つの遺伝子の働きを明らかにする。 プロモーターGFP株の解析から、4遺伝子の詳細な発現組織を明らかにする。 種子特異的に発現するプロモーターと細胞伸長因子を組み合わせたコンストラクトを作成し、植物へ導入後、種子の大きさ、数、重さ等の収量に関する形質を測定する。4遺伝子が細胞伸長を正に制御する因子であれば、作成した形質転換体の種子サイズが増大する。抑制因子であった場合は、キメラリプレッサーを用いて機能を逆に制御することで種子サイズの増大を目指す。
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