研究課題/領域番号 |
18K14435
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
一瀬 瑞穂 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (60755718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | PPRタンパク質 / RNA結合タンパク質 / ミトコンドリア / 植物 / 遺伝子発現制御 / RNAスプライシング |
研究実績の概要 |
植物ミトコンドリアの遺伝子発現制御システムを理解するために、基部陸上植物ヒメツリガネゴケを用いて鍵因子pentatricopeptide repeat (PPR)タンパク質の分子機能の解明を目指した。今年度の主な成果は以下の通りである。 (1)ミトコンドリア局在型PpPPR_31変異株で、電子伝達系複合体IおよびVのサブユニットをそれぞれコードするnad5とatp9遺伝子のスプライシング効率が低下していた。2つの遺伝子はexon-intron junction付近に類似の配列を有しており、PpPPR_31はこれらの配列に特異的に結合した。PpPPR_31は2ヶ所のイントロンのRNAスプリシング因子であることを明らかにした。 (2)ミトコンドリア局在型PpPPR_9変異株で、電子伝達系IVのサブユニットをコードするcox1のスプライシング効率が顕著に低下しており、PpPPR_9はイントロン内の配列に特異的に結合した。当研究室では以前、cox1のスプライシング因子PpPPR_43を同定しており、1ヶ所のスプライシングにPpPPR_9とPpPPR_43が協調的に働いていることが強く示唆された。 (3)PPRタンパク質はPPRモチーフがRNA塩基と1:1の対応関係で結合する配列特異的なRNA結合タンパク質であるが、PPRモチーフのバリアントであるLモチーフ(for Long)の機能は不明であった。In vitro RNA結合実験から、LモチーフはRNA結合モチーフではなくスペーサーとして機能することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たにPpPPR_9と31の分子機能を解明することに成功した。また、Lモチーフの機能に関する新たな知見も得ることができた。これらの成果をまとめて2本の原著論文として発表することができたため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はヒメツリガネゴケPPR変異体ライブラリーから、継続して興味深いPPR遺伝子について分子機能解析を行う。網羅的なオルガネラ遺伝子発現解析を行い、標的RNA分子を同定する。RNAレベルで異常が検出できない場合は、PPRタンパク質が翻訳に関与している可能性もあるため、Ribo-seq解析を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品の購入費が節約できたため差額が生じた。消耗品費として、酵素類、プラスチック器具、オリゴ核酸、合成遺伝子を購入予定である。また、次年度に持ち越しとなった論文の投稿料の支払いに充てる。
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