研究実績の概要 |
本研究の目的は、3種のイネ澱粉枝作り酵素(Branching Enzyme; BEI, BEIIa, BEIIb)の相補関係を明確にすることである。3種のBEは、組織による発現強度・相互作用する相手・形成する枝の長さが異なり、そのバランスが澱粉の枝の長さ・位置・頻度に影響し、澱粉特性や米の用途を左右する。いずれかが欠損すると、他のBEが機能の一部を相補すると推測されるが、澱粉構造の制御機構を解明するためには、BEの相補関係を明確にする必要がある。 本研究では、二つのBE を同時に欠損させることで、残り一つとなったBEの役割を明確に示す。具体的には、be1/be2bとbe1/be2aイネ変異体を用いて、1) 澱粉の構造と特性、2) 酵素間相互作用の変化を明らかにする。「どのBEが、どの酵素と相互作用して、どの長さの枝を形成し、その結果、澱粉の特性がどう変わるか」を明確にする。 H30年度は、be1/be2bイネ二重変異体を用いて澱粉の特性(アミロース含量・難消化性澱粉含量・糊化温度)を明らかにした。その結果、既存のジャポニカ米のアミロース含量が約20%であるのに対し、be1/be2bのアミロース含量は約52%と既存の品種の最高値を10%以上も上回った。また、ジャポニカ品種の玄米粉の難消化性澱粉が澱粉の約0.2%と微量であるのに対し、be1/be2bの難消化性澱粉は澱粉の約35%を占め175倍も増加した。ジャポニカ米の糊化ピーク温は60℃に満たないが、be1/be2bの糊化ピーク温度は約77℃であり、高糊化温度の親系統であるbe2bの70℃を上まわった。これらのことから、be1/be2bのアミロペクチンは長い二重螺旋を形成することが推測された。
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