研究実績の概要 |
本研究の目的は、3種のイネ澱粉枝作り酵素(Branching Enzyme; BEI, BEIIa, BEIIb)の相補関係を明確にすることである。3種のBEは、組織による発現強度・ 相互作用する相手・形成する枝の長さが異なり、そのバランスが澱粉の枝の長さ・位置・頻度に影響し、澱粉特性や米の用途を左右する。いずれかが欠損すると、他のBEが機能の一部を相補すると推測されるが、澱粉構造の制御機構を解明するためには、BEの相補関係を明確にする必要がある。本研究では、二つのBEを同時に欠損させることで、残り一つとなったBEの役割を明確に示す。 H30年度はbe1/be2b二重変異体イネの澱粉構造を分析した。その結果、be1/be2a二重変異体は白濁し、超高アミロース含量(約52%)で、難消化性澱粉含量が非常に高い(約35%、WTの175倍)ことが明らかになった。 H31年度はbe1/be2a二重変異体イネの澱粉構造を分析した。be1/be2aは透明の種子で、澱粉特性はbe1欠損変異体と似ており、野生型と比較してDP6-10とDP20-35が微増していた。 また、これまで単離が非常に困難であったbe2a/be2b二重変異体イネの単離に成功した。しかし、be2a/be2b二重変異体は不稔性が極めて強く、次世代の種子は十数粒しか実らなかった。そのため、BEIだけが発現しても、受精または胚乳形成が難しいということが明らかになった。be2a劣性ホモ/be2bヘテロ個体の花粉をヨウ素染色したところ、すべての花粉に澱粉が蓄積されていた。どのような構造の澱粉であるかは、今後明確にする必要があるが、花粉に蓄積した澱粉が分解されにくい構造をしていた可能性が高く花粉管の伸長が妨げられた可能性が考えられる。
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