研究課題/領域番号 |
18K14441
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
佐古 香織 近畿大学, 農学部, 助教 (60722395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 昆虫ホルモン / 塩ストレス / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
本研究は,昆虫ホルモンによる植物耐塩性機構の解明を目指すものである。 動くことのできない植物は高塩・高温・低温・乾燥など様々な環境ストレスにさらされている。塩害は,世界の灌漑農地の約20%で発生しており,農作物の収量に深刻な被害をもたらす環境ストレスである。2050年には世界人口が90億人を突破すると試算されていることからも、持続的な食糧供給実現のために植物の高塩応答機構を解明し,耐塩性作物および肥料を開発することは危急の課題である。 近年、植物に化合物を処理することで,植物が持つ環境ストレス応答能力を強化し,ストレス耐性を付与する手法,ケミカルプライミングに注目が集まっている。本手法は遺伝子組換えを伴わないことや,様々な植物に適用可能であるといった利点が挙げられる。これまでに申請者は昆虫ホルモンを外生的に投与することによってシロイヌナズナの耐塩性を強化できることを発見した。トランスクリプトーム解析から、昆虫ホルモンがアブシジン酸(ABA)合成を促進し,さらにABAの下流にある根のバリアとして機能するスベリン合成を促進することによって耐塩性を強化することが示唆された。当該年度は遺伝学的解析を実施し、シロイヌナズナ昆虫ホルモン合成酵素過剰発現体が耐塩性を、ノックアウト変異体が感受性を示すことを明らかにした。昆虫ホルモンは哺乳類への影響が少ないことから殺虫剤成分として実用化されている。従って,本研究の推進は殺虫効果と耐塩性を兼ね備えた安全性の高い農薬開発に繋がることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者の異動により、新しい環境でのセットアップに時間を要したため予定より実験に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昆虫ホルモンがどのように耐塩性を強化するかを明らかにするため、昆虫ホルモン類塩体を用いた非感受性変異体のスクリーニングを実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に執行した結果残額が出た。 この残額は次年度の予算と合わせて有効に使用する。
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