研究実績の概要 |
本研究の目的は, 普通ソバの栽培地域/作期を制限する生態型に関わる遺伝子座の特定である. ソバの生態型とは, 日長応答性の違いから区分される3つの型―感光性の弱い夏型・強い秋型・その中間型―であり, これまで生態型に関わる遺伝解析は日長に応答した開花期の早晩性に着目して進められてきた. しかし, 申請者のこれまでの研究から, ソバの生態型は開花期よりも開花後の結実時期・登熟期に強く制限される可能性が見えてきた. そこで本研究では, 日長に応答した結実時期・登熟期の早晩性に着目し, その制御に関わる原因遺伝子座の特定を目的としている.
本年度はまず, 生態型の異なる世界のソバ遺伝資源を用いた栽培試験から, ソバの生態型が開花期よりも登熟期に強く制限されていること, また交配試験により, その要因は花粉側でなく柱頭側に起因することを明らかにした. 遺伝解析においてはまず, Ion torrentの提供するAmpliSeqのシステムを用いることで, マーカー情報の乏しいソバにおいて, ゲノムワイドに座乗する500のマーカーセットを開発した. 開発したマーカーセットおよびAmpliSeqによる多型解析技術を用いて登熟期に関するQTL解析を行った結果, 2つの独立したF2集団において, 登熟期に関するQTLをそれぞれ検出できた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果より, ソバの生態型が日長に応答した登熟期の早晩性に強く制限さることが明らかになり, また遺伝解析の基盤となるマーカーセットおよび解析システムも開発できた. ただし, 開発した500のマーカーセットの中にはoff-target増幅によりマーカーとして使用できないものもあったため, それらのマーカーを除き, 比較的 ”疎” であった連鎖群に座乗するようなマーカーを追加し, より高精度なマーカーセットの作出を目指す. 登熟期に関するQTL解析は年次反復をとり, その効果の安定性を検証する.
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