研究実績の概要 |
普通ソバは日長応答性の違いから3つの生態型―感光性の弱い夏型・強い秋型・その中間型―に区分さる。本研究では、ソバの栽培地域・作期を制限する生態型に関わる遺伝子座の特定を目的とした。
昨年度までの研究から、1) ソバの生態型は日長に応答した「開花の早晩性」よりも「開花後の結実・登熟の早晩性」に強く影響を与えること、また、柱頭側にその要因があることを明らかにした。また、2) ソバのゲノムワイドなAmpliSeqカスタムパネルを開発し、このカスタムパネル用いて、3) 生態型の異なる交雑分離集団から夏型化 (長日条件下での結実・登熟の早生化)に関わるQTLsを検出した。さらに、4) 生態型の異なる2品種間のRNA-seq解析から、生態型間での発現変動遺伝子群を網羅的に検出した。
本年度は、5) 再度自然長日条件下で遺伝解析を行い、これまでに検出した夏型化QTLsが年次を超えて効果を持つことを確認した。夏型化QTLは開花期に関するQTLとは異なる遺伝子座に検出されたためソバでは「開花の早晩性」と「結実・登熟の早晩性」は独立した遺伝子により制御される可能性が示された。また、6) 最も効果の高かった夏型化QTLについて残余ヘテロ接合体系統 (RHL; F5)を育成した。現在のソバのゲノムデータベースはドラフトゲノム配列 (N50=25.1kb、387,594 scaffolds)であり、物理地図ベースではQTLが座乗するScaffoldsの周辺scaffoldsや遺伝子が特定できない。そこで、これまでのカスタムパネルに加え、7) GRAS-Diにより新たに高密度連鎖地図を作成しQTL周辺のscaffolds情報を追加した。その結果、QTL周辺のscaffoldsにはシロイヌナズナの時計遺伝子のホモログなどが座乗しておりこれらホモログが夏型化に関わる候補遺伝子のひとつとして考えられた。
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