研究課題/領域番号 |
18K14449
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研究機関 | 和歌山県農林水産部(農業試験場、果樹試験場、畜産試験場、林業試験場及び水産試験場) |
研究代表者 |
沼口 孝司 和歌山県農林水産部(農業試験場、果樹試験場、畜産試験場、林業試験場及び水産試験場), 果樹試験場うめ研究所, 副主査研究員 (70761831)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウメ / ウイルス抵抗性 / 集団構造解析 |
研究実績の概要 |
永年作物である果樹においては、ウイルス病害は致命的な問題となり得る。本研究では、ウメのウイルス病の一種である葉縁えそ病への抵抗性に関与する遺伝的因子の同定を通じて、果樹ウイルス抵抗性メカニズムの一端を理解することを目的とする。本年度は、ウメおよびその近縁種からなる遺伝資源を用いた研究基盤の構築および予備調査を中心に遂行した。 1.ウメ葉縁えそ病抵抗性の特性化:ウメ葉縁えそ病と関連の深い2種ウイルス、plum bark necrosis stem pitting-associated virus(PBNSPaV)およびlittle cherry virus 2(LChV-2)が重複感染する樹に59品種の遺伝資源を高接ぎし、RT-PCRによるウイルス検定および葉の病徴観察を行った。その結果、特定の系統群が両ウイルスに対する抵抗性を有する可能性が示唆された。 2.LChV-2非感染性に関与する遺伝的因子の同定:予備調査でLChV-2への非感染性が確認された品種について、発芽直後の幼葉を用いたmRNA-seqを行い、ウイルスの接ぎ木接種の有無によって発現変動する遺伝子群の候補を抽出した。 3.ウイルス感染性および発病程度の品種間差に関与する遺伝的因子の探索:ゲノムワイド関連解析(GWAS)の実施に向け、ウメおよび近縁種128系統からなる遺伝資源について約15,000座のエキソンをターゲットとしたシークエンシングを行い、SNPデータベースを構築した。本データベースおよびSSRマーカー遺伝子型を基に詳細な遺伝解析を行った結果、現存する日本と中国のウメとの間に明確な構造化が観察された。加えて、日本のウメ集団内に人間の志向性が関わったと推察される微弱な遺伝的構造が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形質調査用の材料は、接ぎ木時期に留意し、生育旺盛な徒長枝に複数本の穂木を接ぐことで効率よく育成することができた。ゲノム解析では解析領域を選択的に濃縮する方法をとることで、遺伝的多様性やヘテロ性の高いウメ品種群を用いても高いジェノタイピング率を確保することができた。
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今後の研究の推進方策 |
さらに追加の接ぎ木を行い、系統数を増加させた上で再度病徴およびウイルス保有濃度に関する調査を行う。また、構築したSNPデータベースを利用したゲノム解析を並行して行い、病徴が軽い、またはウイルス保有濃度の低い系統群に共通する遺伝的因子を探索する。既にLChV-2抵抗性が確認されている系統については、引き続き感受性品種の交配を行い、交雑後代の獲得を進める。
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