前年度までに引き続き、重複感染樹に高接ぎした81品種のウメ、アンズおよびスモモの葉および花における葉縁えそ病の症状調査を行った。その結果、果実利用を主目的とする品種群(実ウメおよび小ウメ)で症状が激しく、観賞用の花ウメ品種群では、症状の程度に大きなばらつきが認められる傾向であった。一方、台湾の品種やアンズとの種間交雑品種では、葉、花の症状ともに軽い傾向であった。次に、これらの高接ぎ品種群について、定量的RT-PCR法によるplum bark necrosis stem pitting-associated virus(PBNSPaV)およびlittle cherry virus 2(LChV-2)のウイルス検定を行った。その結果、ほぼすべての品種において2種ウイルスの重複感染が確認された。しかし、葉および花における症状の程度と2種ウイルスの保毒濃度との間には明確な関係性は認められなかった。葉(2019および20年)および花(2021年)の症状ともに軽い品種群が13品種見いだされ、実ウメ1品種、花ウメ2品種、台湾の品種2品種、アンズとの種間交雑由来4品種、スモモとの種間交雑由来2品種、アンズ1品種およびスモモ1品種が含まれた。調査品種について、Exon capture法(Numaguchi et al. 2020)により取得したゲノムワイドSNPsを用いた関連解析を実施したところ、葉、花の症状の品種間差に関係するピークが複数認められた。今後これらピーク近傍の遺伝構造ならびに座乗する遺伝子群について更なる検討を進める。
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