研究課題/領域番号 |
18K14451
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
松波 麻耶 岩手大学, 農学部, 助教 (40740270)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フィールド / 遺伝子発現 / イネ / アクアポリン / 窒素輸送 |
研究実績の概要 |
野外で生育する作物のあらゆる生命現象は、日々刻々と変化する複雑な環境要因に強く影響を受けている。根は土壌環境を直接感知するとともに、地上部を通じて大気環境からも影響を受け、さらに地上部需要に応じて養水分を吸収し、地上部に供給している。従って、養水分吸収を制御する遺伝子の発現動態を明らかにすることは、作物根が土壌-植物-大気系をどのように感知し、養水分吸収を調節しているかを理解するための有効なツールとなる可能性がある。本研究では、野外環境でイネの根が土壌・大気環境・地上部の養水分需要に対して、どのように遺伝子発現を制御し、水や窒素の吸収を調節しているかを明らかにすることを目的としている。 2018年度は大きく分けて2つの実験を行った。まずは2017年度に田植え後から登熟期までの長期間にわたりフィールドから採取したイネの葉および根サンプルのRNAseq解析データを用い、水と窒素の吸収に関与する遺伝子群の発現を調査した。その結果、生育ステージの進行につれて発現量が増加または低下するタイプ、生育ステージによる変化は明瞭ではないが日々の気象条件と高い相関を示すタイプなどに類型化される可能性が示唆された。次に、2018年に窒素施肥レベルを3段階(無窒素、標準、多窒素)に設定した圃場でイネの栽培試験を行い、分げつ期から登熟期までに断続的に葉および根のサンプリングを行った。これらのサンプルについて乾物重、窒素吸収量を調査し、処理の狙い通り、窒素吸収量が施肥レベルに応じて異なることを確認した。今後、同圃場から得られた根サンプルについて遺伝子発現解析を行い、窒素施肥レベルの違いが根の窒素吸収関連遺伝子に及ぼす影響を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールド栽培されたイネの根において水や窒素の輸送に関与する遺伝子の定量的解析が行えたことで、それぞれの遺伝子発現レベルの長期間における変化をとらえた重要なデータを得ることができた。これは本研究のねらいである、「野外環境でのイネが水や窒素の吸収に関わる遺伝子をどのように制御しているのか?」という問いに一つの解をもたらすものであり、単年度の結果ではあるが今後の研究展開においてきわめて有益な知見が得られたと考えている。ただし、これらの遺伝子の発現変動が生育ステージに依存しているものなのか、それとも気象条件や土壌養分条件に依るものなのかは、2019年度以降に様々な条件、反復で検討する必要があるため、おおむね順調に進展している、という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度はフィールドで栽培されたイネの網羅的な遺伝子の発現レベルが幅広い生育ステージでどのように変動するかについての重要なデータセットを得ることが出来た。特に本研究の一番の目的である窒素と水の輸送に関わる遺伝子群においては、それぞれの発現パターンの特徴や気象への応答性についての基礎データが得られた。これらの遺伝子の応答が、ある特定の気象条件に依存しているものなのか、あるいは土壌中の無機元素の多寡によるものなのか、それとも生育ステージによるものなのかをさらに明らかにしていくために、2019年度は土壌窒素レベルを変動させた圃場やポット栽培試験から得られたサンプルの解析を進め、遺伝子応答を制御する要因についてデータを得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は実験補助として謝金等を予定していたが、補助員を雇用せずに研究が遂行できたことと、効率よく経費を執行したため残額が生じた。残額は2019年度以降に行う遺伝子発現解析の経費として有効に使用する予定である。
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