研究課題
世界的にイネの生産性向上が求められている中,様々な有用遺伝子が発見され,実際の生産現場に寄与することが期待されている.しかし,1穂籾数増加遺伝子を導入した準同質遺伝子系統 (NIL) では,1穂籾数は顕著に増加するものの登熟歩合の低下により収量への貢献度が低いことが課題となっている.本研究では,1穂籾数増加に関わる遺伝子を導入した準同質遺伝子系統で見られる登熟不良に着目し,穂首維管束の形態と同化産物の輸送能との関係を明らかにすることを目的とした.本年度は,日本において,NERICA1に異なる1穂籾数増加機構をもつGn1aおよびWFPを導入した系統 (NIL-Gn1a, NIL-WFP, NIL-Gn1a+WFP) の生育に関する基礎的知見を得るとともに,穂首節間の直径,大維管束数およびその面積,維管束比(1次枝梗数に対する大維管束数の比)を調査した.共試した4品種/系統 (NERICA1, NIL-Gn1a, NIL-WFP, NIL-Gn1a+WFP) では,維管束の形態に系統間差異が確認された.一方で,茎数を除く生育データには,顕著な系統間差異が認められなかった.今後,維管束の形態的差異と物質輸送機能に関係性について調査を進めていく予定である.また,生育期間中の環境要因の影響を検討するために,栽培期間中の気温や日射量が異なるケニア農畜産業研究機構ムエア支所において,2018年後期より栽培試験を開始した.これらのデータについては,現在解析中である.
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り,NERICA1に異なる1穂籾数増加機構をもつGn1aおよびWFPを導入した系統 (NIL-Gn1a, NIL-WFP, NIL-Gn1a+WFP) を用いて,日本およびケニアにおいて栽培試験を実施し,穂首維管束の形態に系統間差異を確認することができたため.
準同質遺伝子系統 (NIL-Gn1a, NIL-WFP, NIL-Gn1a+WFP) において,穂首維管束の形態に系統間差異が確認されたので,2019年度は施肥量など栽培条件を変化させた処理区を設け,遺伝子導入系統における乾物分配など物質生産特性を中心に調査する予定である。また,日本 (温帯) とケニア (熱帯高地) において得られたデータを比較し,栽培環境が各系統の生育および収量反応に及ぼす影響についても評価する予定である.得られた成果については,学会や学術雑誌などで公表する予定である.
当初予定していた測定機器より安価で必要条件を満たす代替品を購入したため,次年度使用額が生じた.調査地であるケニアへの渡航費および学会参加のための旅費に充てる.
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)