研究実績の概要 |
世界的にイネの生産性向上が求められている中,様々な有用遺伝子が発見され,実際の生産現場に寄与することが期待されている.しかし,1穂籾数増加遺伝子を導入した準同質遺伝子系統 (NIL) では,1穂籾数は顕著に増加するものの登熟歩合の低下により収量への貢献度が低いことが課題となっている.本研究では,1穂籾数増加に関わる遺伝子を導入した準同質遺伝子系統で見られる登熟不良に着目し,穂首維管束の形態と同化産物の輸送能との関係を明らかにすることを目的とした. 本年度は,NERICA1に異なる1穂籾数増加機構をもつGn1aおよびWFPを導入した系統 (NIL-Gn1a, NIL-WFP, NIL-Gn1a+WFP) を供試し,日本において圃場試験を実施した.これらのデータを,昨年度にケニアで実施した圃場試験のデータと比較し,栽培環境の差異が,生育および収量構成要素に及ぼす影響をについて調査した.供試した3系統 (NIL-Gn1a, NIL-WFP, NIL-Gn1a+WFP) の生育および収量構成要素は,栽培環境により変動した.特に,その変動は,茎数や登熟歩合で大きく,系統間によっても異なった.栽培環境が穂首維管束の形態に及ぼす影響についても,現在解析中である. また,データの信頼度を向上させるために,昨年度に引き続き,ケニア農畜産業研究機構ムエア支所において,栽培試験を開始した.本年度は,準同質遺伝子系統における乾物分配など物質生産特性を調査するために,標準施肥区に加え,窒素施肥量を変化させた処理区を追加した.圃場試験で収集したサンプルを用いて,今後,収量構成要素や茎葉の非構造性炭水化物 (NSC) 量の推移等を調査する予定である.
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