研究課題/領域番号 |
18K14454
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
廣岡 義博 近畿大学, 農学部, 助教 (80780981)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トウジンビエ / 施肥 / 耕うん / アイスプラント / 混作 / 化学肥料 / 牛糞 |
研究実績の概要 |
南西アフリカに位置するナミビア共和国は降水量の年次変動が非常に大きく,洪水や干ばつなどの環境ストレスに対応した栽培技術が必要とされている.しかしながら,耕うんや施肥,作付け方法などの栽培技術が現地の作物の生理・生育に与える影響を定量的に示した例は少なく,これらを定量的に評価するために以下の実験を行った. ①トウジンビエの栽培試験 ナミビア北中部に位置するナミビア大学オゴンゴ校内の実験圃場で,トウジンビエを供試し,耕うん・施肥試験を行った.慣行区と畝立区の2つの耕うん処理を主要因とし,それぞれの処理区に対して,副要因として無施肥区,化学肥料区,牛糞区,混合区の4水準の施肥処理を設定した.水環境と施肥環境に関する有意な交互作用が検出され,また,化学肥料区においては,SPAD 値や土壌養分量も小さかった.これは,生育後期の洪水によって,生育初期に成長量の大きい植物体が,湛水によるストレスを大きく受けたためと考えられる.以上の結果から,ナミビア北中部におけるトウジンビエ栽培において,元肥のみの化学肥料投入は,初期の生育を促進する一方で,湛水ストレスが深刻化するリスクが大きくなるため,畝立て耕うんを行った上で,堆肥や追肥をうまく活用することが重要であると示唆された. ②アイスプラントとイネの混作栽培試験 近畿大学農学部実験圃場で,イネとアイスプラントを供試し,単作区と混作区を設け、湛水・塩ストレス試験を行った.イネでは,全ての塩ストレス区において単作区よりも混作区の光合成・蒸散速度が高く,高濃度塩ストレス区では 5%水準の有意性を示した.アイスプラントでは,湛水ストレス区において単作区より混作区で地上部乾物重が大きかった.以上のことから,イネとアイスプラントの混作により,イネの塩ストレスを緩和し,同時に,アイスプラントの湛水ストレスを緩和しうることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ナミビアでの現地栽培試験結果から,本研究の最大の目的であったトウジンビエの生育・収量に関する水環境と施肥環境の交互作用を定量化できた.また,アイスプラントとイネの混作が両者の環境ストレスを緩和しうることも示唆された.このため,これらの試験において3年目に予定していた詳細な成長解析を次年度以降に行うことができるため,当初の計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
トウジンビエの耕うん・施肥試験から,水環境と施肥環境の交互作用が検出され,このことは水環境によって最適な栽培管理が異なることを示唆している.そのため,今後は本実験の繰り返しを行うとともに,非破壊計測による生育指標の計測頻度を増やすことで,より詳細な成長解析を行い,最適な施肥時期・施肥量の検討を行っていく予定である. アイスプラントとイネの混作試験においては,今後,異種作物間のストレス緩和効果の向上と,異種作物間の競合の緩和策を検討していく予定である. 以上の試験における計測・解析結果を順次取りまとめ,学会発表や学術誌への投稿を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験結果から、次年度に国際誌への投稿ができるため,そのための英文校正費用・論文投稿料が必要となった.また,新たな実験を立ち上げる必要が生じたため,その栽培管理・データ整理のための人件費が必要となったため.
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