本研究ではキク矮化ウイロイド(CSVd)感受性品種であるキク‘ピアト’にCSVdを接種し,その後の感染配列の変化を調査していく.単系統のCSVdを接種するために接種源としてin vitro転写したRNAを用いる予定であり,まずはこのRNAを用いた効率的な接種系を確認した.濃度調整したウイロイドRNAを,ペンチあるいはカーボランダムと綿棒を用いた機械的接種に用いたところ,ペンチを用いた時に良好な感染率(92%)を得た.次に,感染配列から変異系統を抽出する手法を検討した.接種1か月後に感染株の上位葉からRNAを抽出し,サンプル中のCSVd配列をRT-PCRによって増幅・クローニングした.クローニングした配列をGCクランプを付加したプライマーを用いたPCRによって増幅し,温度勾配ゲル電気泳動システムを用いたヘテロデュープレックス解析により感染配列を調査した.この結果,調査した32クローンの中から,接種に用いた配列とは異なるバンドパターンを示す増幅産物を4種得た.これらの配列をサンガーシーケンスにより確認すると,それぞれ接種に用いた配列とは1あるいは2塩基の相違を持つCSVd配列であることがわかり,本手法によりCSVdの変異系統を1塩基レベルでスクリーニングできることを確認した.なお,2019年度春に研究代表者の所属機関異動があったが,実験に用いる‘ピアト’CSVdフリー株はin vitro培養にて継代し,無事に移動した.現在はin vitroにおいて増殖を進めているところであり,2019年度夏季から圃場に定植できる予定である.
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