ウイロイドは環状一本鎖RNAから成る病原体である.現在30種以上が報告され,それぞれ特定の宿主域を持つ.ウイロイドは種内にも多数の変異系統があり,これらの変異は病原性・感染性等に影響を持つことが知られるが,これらの変異の蓄積と宿主周辺の環境要因との関係は明らかでない.本研究ではキク矮化ウイロイド(CSVd)感受性品種におけるCSVd感染配列の季節変動を調査し,また,植物体周辺の環境要因の変化を併せて解析することで,ウイロイドの変異要因と病原性への影響を探ることを目的とした.2018年度にはペンチを用いたCSVdの機械的接種系を試した.2019年度には同法により解析用個体を準備する予定であったが,CSVdの濃度上昇が遅く,調査期間内に経時的解析に適した植物材料を得られないと判断した.代わりに,大学保存の在来キク系統からCSVdに既に高濃度で感染していた3品種をスクリーニングした.本年度は,約半年間かけて温室および露地植栽の3品種から経時的に葉を採集し,これらに感染しているCSVd集団の変遷をamplicon-seq法により解析した.その結果,各品種の各時点において,CSVd集団は非常に多数の(>100)系統から構成されることがわかった.現時点では,CSVd集団に含まれる配列の変異箇所や系統の存在比について,品種ごと,あるいは季節ごとの明確な傾向を見出すことはできていない.従って,これらの変異はランダムに生じ,蓄積した可能性がある.
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