研究課題/領域番号 |
18K14462
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
田崎 啓介 東京農業大学, 農学部, 助教 (80733419)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アントシアニン |
研究実績の概要 |
本研究では、リンドウにおける花弁着色誘導における光を介した制御経路としてリンゴの果皮着色などで知られるCOP1を介した「第一光応答経路」の存在の可能性の他に、COP1を介さない「第二光応答経路」が存在する可能性を予想している。前年度はこれらの経路の関連因子選抜を効率的に行うために、光波長域の異なるLED光原(RGB、Blue、Green、Red)および暗黒区を用意し、リンドウの蕾と葉を含む節への照射実験を行ったが、停電によりフリーザーのサンプルを全て失ったことから、今年度は同様の実験を行った。さらに、着色誘導に寄与する光受容器官の推定を目的として、葉あるいは蕾の遮光実験も合わせて行った。照射後の開花した花の花色表現型を分光測色計を用いて調べたところ、花色濃淡の指標としているL*値はBlue照射区で最も低かった。HPLCを用いた色素解析の結果、光質の違いによる花弁のアントシアニン組成に差異は認められなかった。またBlue照射-葉遮光区のL*値はBlue照射-蕾遮光区よりも高い値を示し、その着色は個体により不安定であった。これらの結果から、全体照射区では青色光が花弁の着色に最も寄与しており、さらに花弁の光誘導着色において葉の光需要もまた重要であることが示唆された。Red照射-葉遮光区の花弁は暗黒区のものと同程度のL*値を示し、主要色素ゲンチオデルフィンの含量においてもRed照射-葉遮光区は著しく減少していた。これらの結果は、リンドウの光応答着色には、青色光だけでなく赤色光も重要であることを示唆するとともに、葉への光照射は、青色光だけでなく赤色光もまた花弁着色に寄与している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異なる光源別に光照射を済ませたリンドウの花弁サンプルを用いてRNA-seq解析を行い、転写因子おびフラボノイド生合成経路の構造遺伝子について処理区間の発現比較を2月以降に実施する予定だったが、新型コロナウイルスによる活動自粛で遅れが生じ、本報告書提出の6月現在まで実験は停止している。しかしながら、今年度の実験では波長による色素蓄積の差異、遮光部位における差異が認められて、サンプルも維持されていることから、活動再開後は即時に解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られたLED照射処理したリンドウ花弁サンプルを用いてRNA-seq解析を行う。これまでの結果から青色光の着色への寄与率が最も高いと予想されることから、青色光の照射区を中心に暗黒区および赤色光照射区などとの発現差異解析を行い、着色に寄与する構造遺伝子とその上流転写因子を選抜する。当初の計画ではナノポアシークエンスによりリファレンスを補強する予定だったが、計画が遅れているためまずはde novoで得ているリファレンスを用いて上記の解析を推進する。 NGSデータを用いて選抜した因子については、機能を調べるために、レポーターアッセイを行い、またBBWV-2ウイルスベクターを用いたin vivoにおける解析も実施する。これらの結果を踏まえて光源の種類、光受容体、転写因子、構造遺伝子までの制御経路について考察を行う。さらに並行してゲノム編集によるリンドウノックアウト個体の作出を推進し、確実な機能証明に向けた準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種試薬などの購入が2月以降に滞ったために次年度使用額が生じた。 次年度の計画ではRNA解析などで多くの試薬を要することから、その購入に充てて計画を推進する予定である。
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