研究課題/領域番号 |
18K14463
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
尾上 典之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (50613121)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カキ / 高次倍数体 / 近交弱勢 / ヘテロ接合度 / 六倍体 / GBS / RAD-seq / 果樹育種 |
研究実績の概要 |
1)生産性関連形質の組合せ平均とマーカー近縁度との関連解析 RAD-seq解析したカキ育種の主要な交配親47個体(16在来品種、9育成品種、および22系統)を用いた98組合せ(計5072個体)について、交配親のゲノム情報を元に集団レベルのヘテロ接合度(⇔マーカー近交度:Fpoly)を推定して、生産性関連形質の組合せ平均値との関連を回帰分析した。具体的には、各生産性関連形質の組合せ平均値を応答変数、Fpolyを説明変数として回帰分析した。ただし、果実重を応答変数にした場合は、両親の果実重平均値も説明変数に加えた。その結果、Fpolyの係数が有意となった形質のうち、Fpolyの上昇に伴って果実重と収量(g)は減少し、高接ぎ後から結実までの年数は長くなった。一方、説明変数に家系情報に基づいて計算した近交係数(Fped)を用いた場合は、Fpedの上昇に伴って、果実重と収穫果数(n)が減少した。これらの結果は、RAD-seq解析を用いたヘテロ接合度推定法が近交弱勢現象の検出に有効であることを示すとともに、集団レベルのヘテロ接合度の低下が多収性育種に悪影響をもたらすことを裏付けるものである。本解析により、カキ育種における近交弱勢現象として、収量低下と幼若性の長期化を初めて明らかにした。 2)生産性関連形質の調査 RAD-seq解析予定の同一両親に由来する交雑実生集団(約100個体)について、樹勢、雌花の着生、主幹基部の直径、および新梢数と長さ等を調査した。 3)ゲノムワイドなヘテロ接合度の推定 2)で調査した交雑実生集団(約100個体)についてRAD-seq解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度予定していた1)生産性関連形質の組合せ平均とマーカー近縁度との関連解析、2)生産性関連形質の調査についてはいずれも計画通り行なった。3)令和2年度実施予定であった同一両親に由来する交雑実生集団に対するRAD-seq解析を、予定よりも早い令和元年度に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り研究を進められる見込みである。 1)生産性関連形質の組合せ平均とマーカー近縁度との関連解析 令和元年度で完了 2)生産性関連形質調査およびゲノムワイドヘテロ接合度との関連解析 令和2年度も引き続き実生集団(約100個体)について生産性関連形質を継続調査する。 令和元年度に取得済のRAD-seqデータを用いて、ゲノムワイドなヘテロ接合度を推定する。最終年度の2021年度には、実生集団の生産性関連形質のデータとヘテロ接合度との関連解析を実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の見込みより次世代シーケンス解析費用を抑えられたため、次年度使用額が生じた。生産性関連形質調査およびゲノムワイドヘテロ接合度との関連解析において、今後追加のRAD-seq解析を計画している。供試個体を増やすことができれば、生産性関連形質とヘテロ接合度との関連の普遍性についても解析できる。
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