田畑の雑草は農作物の収量を大きく減少させるため、現代の農業では主に除草剤の散布と機械による耕うんというふたつの方法によって効率的に雑草を抑制している。雑草が除草剤への抵抗性を進化させる現象は広く研究されている一方、耕起が雑草に与える生態・進化的な影響はほとんど検証されていない。本年度は、これまで採集したメヒシバDigitaria ciliarisをモデルとして、農地においてメヒシバがどのような進化を生じさせているかを検証した。農地と非農地の20集団からメヒシバの種子を採集し、実験室内で自殖させた系統を実験に用いた。実験室内と野外圃場実験によって、いくつかの形質が、農地と非農地で分化していることがわかった。この形質の分化が、耕起による管理に与える影響を定量化するために、メヒシバを圃場に移植し、実験的耕起をおこなった。その結果、農地由来のメヒシバの方が耕起後の再生能力が非農地のメヒシバよりも高いことがわかった。さらに、農地と非農地で分化しているいくつかの形質が耕うん後の再生に関わっていることが分かった。これは、農地における雑草・非農地の進化的分化が、雑草の防除効率に影響しうることを示唆しており、興味深い結果といえる。加えて、この農地・非農地の進化的分化は研究モデルとして優れていると考えられるため、本年度はメヒシバ以外の種子も研究対象に含めることにし、それぞれ50集団から種子を採集した。
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