植物の篩部に寄生し代謝系を宿主に依存して増殖する細菌「ファイトプラズマ」は40種以上が知られ、世界各地で1000種以上の植物に大きな被害を与えている。治療薬剤として、1967年にファイトプラズマの発見と同時に効果を確認された抗生物質「テトラサイクリン」が唯一有効とされるが、効果は一時的で、使用を中止すると再発病してしまう。また耐性菌の出現リスクが評価された例がなく、潜在的な問題である。このように、「新たな防除・治療技術」および「耐性菌リスク評価技術」の開発が大きな課題であるが、ファイトプラズマは人工培養できないために、培地を用いた一般的な細菌に対する薬剤評価系を適用できず、ファイトプラズマの薬剤感受性・耐性に関する性状は発見から50年を経ても理解が進んでいない。そこで本研究では、これまで困難とされてきたファイトプラズマの防除・治療技術および耐性菌リスク評価技術を開発することを目的として、培養系が確立されていないファイトプラズマを植物ごと培地上で培養する「試験管内培養系」を用いることで薬剤スクリーニングを実施する。今回、これまでに有効性が確認された各種薬剤の誘導体を用いて、ファイトプラズマ蓄積量への影響を比較解析した。その結果、同じ系統の薬剤であっても誘導体ごとに効果が大きく異なり、ファイトプラズマ蓄積量を大きく減少させる卓効を示す誘導体もあれば、全く効果のない誘導体もあることが明らかになった。続いて、効果の高かった誘導体を用いて、単剤処理の場合と、別系統の薬剤を混合処理した場合におけるファイトプラズマ蓄積量への影響を比較解析した。その結果、単剤処理と比べて混合処理のほうが効果が高い可能性が示唆された。
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