研究課題/領域番号 |
18K14466
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
晝間 敬 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20714504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共生糸状菌 / 病原糸状菌 / リン枯渇適応反応 / PHR1 / 防御応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、内生糸状菌Colletotrichum tofieldiae (Ct)による植物生長促進に必要な転写因子PHR1の作用機構を探索することを目的としている。 本年度は、PHR1およびそのパラログであるPHL1によって制御されるCt誘導性遺伝子群を同定するため、時系列のトランスクリプトーム解析を行った。その結果、両転写因子は、Ct感染時に誘導されるリン欠乏応答遺伝子(共生関連遺伝子を含む)の誘導を制御していることに加えて、一部の防御関連遺伝子の発現を正に制御していることが判明した。Ctの感染量はphr1 phl1変異体で増加することからも、両転写因子による防御関連遺伝子の制御が菌感染制御に重要であることが示唆された。 興味深いことに、両転写因子は共生型のCtだけではなく、病原型のColletotrichum incanum (Ci)の感染も制御した。 次に、PHR1の根の細胞タイプ特異的な制御機構を明らかにする目的で、PHR1-GFPをそれぞれの細胞タイプ特異的に誘導するプロモーター制御下で発現する植物体を作出した。作出した植物体を用いた予備的実験により、皮層細胞層でPHR1-GFPを発現させることによって、Ctによる植物の共生関連遺伝子の誘導が回復することを見出した。皮層細胞は、Ctと植物が活物共生関係を樹立する場であることを踏まえると納得できる結果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた計画の中で、細胞タイプ特異にPHR1-GFPを発現する植物体の作出および利用が当初の計画よりも早く進んでいることから、順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、 1. Ct, Ci 感染時におけるPHR1 による制御が直接的であるか他の因子を介した間接的なものであるかについて検証する。特に共生時に顕著に誘導される遺伝子に着目して、PHR1-GFP を発現する形質転換体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR などの手法により明らかにする。 2. 根の細胞 タイプ特異的に誘導される遺伝子のプロモーター制御下でPHR1-GFPを発現する形質転換体にCt, Ciを接種しそれらの感染中の遺伝子発現誘導情報を得る。
3. 共生関係樹立時に、細胞タイプ特異的発現を示し、PHR1 によって制御される因子の解 析(遺伝学的解析や細胞生物学的解析など)を重点的に行うことで、PHR1によって制御される経路・因子の中で、Ctによる生長促進効果や根におけるCt、Ciによる感染制御に必要なものを同定する
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次年度使用額が生じた理由 |
RNAseq解析の一部を次年度に移したため。
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