本研究では、植物病原菌が生産する二次代謝産物の植物に対する活性を調査するための手法を検討した。これまでの研究から、モデル植物病原菌であるイネいもち病菌において、二次代謝産物の生産調節を改変すると、生産物の活性を解析可能な場合があることが示唆された。 本年度は、非モデル植物病原菌にも本手法を応用できるよう、研究基盤の整備を進めた。ダイズの病原糸状菌のうち、ゲノム情報が公開されていない、もしくは、ゲノム情報が最近公開された病原菌の一部を対象として、各病原菌のゲノムシーケンスの取得を進めた。また、ゲノム中に予測された遺伝子情報に基づき、二次代謝産物の生合成に関与すると考えられる遺伝子群を推定した。 続けて、特にダイズ紫斑病菌を対象として、植物への人工接種法を検討した。従来の方法では、紫斑病をダイズの葉に人工的に発生させるには数週間の期間を要していた。効率的に研究を進めるため、短期間で病気を再現できる手法を検討した。ダイズの葉を切り取り、病原菌を接種してから高い湿度を維持することで、接種から9日間程度で病斑を確認できる手法を開発した。 また、ダイズの葉で発生する紫斑病に関して、各ダイズ品種が持つ感受性・抵抗性には未詳な点が多く、紫斑病菌の二次代謝産物研究に適したダイズ品種を選抜する必要があった。世界各地から収集された80品種のダイズに紫斑病菌を接種し、紫斑病に対する感受性品種と抵抗性品種の候補を選抜した。 以上の成果から、ダイズ紫斑病を用いた二次代謝産物の研究を実施するための基礎的情報である、ゲノム情報、接種法、標準となるダイズ品種の情報、を整理することができた。
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