研究課題/領域番号 |
18K14474
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浜島 りな 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (20784408)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リボソーム / hidden break / 昆虫 |
研究実績の概要 |
全ての細胞におけるタンパク質合成は、リボソームRNA (rRNA) とタンパク質からなる巨大複合体、リボソームによって行われる。近年、リボソームの結晶構造解析が飛躍的に進み、リボソームの構造は生物種を超えて高く保存されていることが明らかにされた。その一方で、昆虫リボソームは、一般に“hidden break”という特徴的な構造を有することが知られている。すなわち、昆虫リボソームでは、28S rRNAのES19L領域の一部の塩基が消失しており、28S rRNAが2つに切断された状態で存在している。ほとんどの昆虫がリボソームにhidden breakを持つことからその重要性が示唆されるが、詳細は未解明である。本研究では、 hidden breakを分子レベルで解析することにより、昆虫リボソームにおけるhidden breakの存在意義を見出すことを目指す。 本年度は、まず、昨年度に引き続き、出芽酵母のES19L領域の欠損可能な領域の決定を行った。その結果、ES19L領域36塩基中20塩基、もしくは36塩基中8塩基を欠損させたrRNAのみを発現する出芽酵母株を作出することができた。しかし、これらの欠損rRNAのみを発現する出芽酵母株の生育は、野生型rRNAのみを発現する株と比較して非常に遅かった。次に、出芽酵母のES19L領域の20塩基もしくは8塩基欠損部分にキイロショウジョウバエのES19L領域を挿入し、そのrRNAのみを発現する出芽酵母株の作出を試みた。その結果、これらのrRNAのみを発現する出芽酵母株の生育は、欠損rRNAのみを発現する株と比較して非常に遅くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス由来のES19L配列を持つrRNAを発現する出芽酵母株が生存可能であることから、キイロショウジョウバエ由来のES19L配列を持つrRNAを発現する出芽酵母株も生存可能となると予測していたが、生育が非常に遅く、実験に使うのが困難であることが判明したため。
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今後の研究の推進方策 |
ES19Lの近傍に存在するリボソームタンパク質 (RPL23a, 出芽酵母ホモログはRPL25) には昆虫特異的な配列が存在し、他の生物と比べ1.5~2倍の大きさをもつ。このことから、昆虫のrRNAのES19L領域の安定性には、このタンパク質が重要な役割を果たすことが予想される。そこで、まず、RPL25の代わりにショウジョウバエRPL23aを発現する株を作出する。この株の作出は報告があり、RPL23aがリボソームの機能を損なわないことが示されている (Ross et al., 2007)。次に、この株で、今年度作製したキイロショウジョウバエ由来のES19L配列を持つrRNAを発現させ、出芽酵母株の生育とrRNAの解析を行う。 また、並行して、合成RNAを用いたhidden breakのin vitro系の確立を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関の変更に伴い、実験に必要な試薬等を揃えるため。
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