研究課題/領域番号 |
18K14484
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研究機関 | 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター) |
研究代表者 |
岡 慎一郎 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 主任研究員 (00721747)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外来種対策 / ティラピア / 不妊 / SMRT / 駆除 |
研究実績の概要 |
外来種モザンビークティラピア(以下ティラピア)の不妊雄を野外水域に放ち,繁殖を阻害することで生息数を減じさせる駆除技術の効果検証と開発が本研究の目的である。 本種の不妊雄による繁殖の阻害については水槽実験では検証されている。不妊雄は,雌に 受精しない卵を産ませるため,繁殖効率を下げ,次世代の資源量を減少させることができる。実際,昆虫類等では野外環境で根絶できた実績がある一方,本種を含む脊椎動物においては未実証である。そこで,本研究では,ティラピアが生息する野外の小規模池に人工作出した不妊雄を放流し,定期採集によるサイズ組成や出現量の動態,稚魚の出生状況,繁殖縄張り雄の挙動などによって効果を検証するとともに,効率的に個体数を減少させる最適な放流量や,駆除後の不妊雄の駆除法などといった,実用化に有益な技術的課題の検討も並行し,不妊雄を用いたティラピアの効率的駆除手法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ティラピアが多数生息する海洋博公園の閉鎖的人工池において,捕獲による駆除と不妊オス放流を並行し,駆除の効果を検証した。総面積1000m2の実験池でこれまでに合計3万尾程度の駆除を実施し、サイズ構成については小型化が見込めたものの、努力当たり捕獲数は昨年度よりも増加しており明確な減少傾向は認められていない。また、昨年度に引き続き、不妊オス放流区域においても明確な効果は得られていない。 昨年度の水槽実験において、不妊化オスの割合がかなり高い場合でも受精卵を保護するメスが確認されたことについて、その要因を探るための実験を行った。複数の雌雄を水槽内で繁殖させて得られた抱卵受精卵に対し、遺伝学的手法による父性判定をおこなった結果、すべてのクラッチが複数の父親を起源とすることが明らかとなった。つまり、雌は重婚をしており、不妊オスと番った場合でもその後に通常オスから1度でも精子を受け取れた場合は口内の卵が授精する可能性が高いと考えられた。つまり、不妊オスを放流するのみでは十分な駆除効果を得られない可能性が指摘できた。 ティラピア駆除後に実施予定であった在来淡水魚については、ギンブナとミナミメダカについては自家繁殖したものをティラピアのいない人工池に放流し、その繁殖と定着を確認した。現在、絶滅危惧種のヒョウモンドジョウについて、促熟と採卵技術の確立を目指して試行中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査で、不妊オスの放流による次世代資源の減少を目指したものの、雌の積極的な重婚などといった想定を超えた繁殖力の強さによって実現は困難である可能性が高いと評価している。最終年度となる令和2年度は、引き続き不妊オスの放流を行い、さらに捕獲努力を増大させ、これまでの結果と比較することによって駆除効果および効果的な手法に関して再評価・再検討する。 さらに、これまでの駆除を通してティラピアが定着した池には水生昆虫をはじめとした水生動物がほとんど出現しない状況を確認できたため、水槽実験においてティラピアの在来生態系への食害に関する調査を実施し、その影響について評価する。
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