研究課題/領域番号 |
18K14485
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮坂 隆文 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (80635483)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 内蒙古 / 観光 / 景観評価 / 砂漠公園 / 土地荒廃 / 保護地域 / ホルチン砂地 / ランドスケープ |
研究実績の概要 |
本年度は、景観写真を用いた砂丘の価値認識評価に関する予備調査、および砂丘の観光利用に関する予備調査を行った。 中国内モンゴルにて主に生態学的なフィールド調査を実施している中国科学院の研究者および大学院生と、名古屋大学のモンゴル人留学生を対象に、植被率の異なる砂丘景観、すなわち流動砂丘、半流動砂丘、固定砂丘の写真を使ったSD(Semantic Differential)法による価値認識評価を試行した。その結果、研究者特有の感覚(有刺植物に対する調査時の嫌なイメージなど)や国内での出身地の違い(砂丘や草原への馴染みの有無など)といった被調査者の属性が評価に反映された。一方で、各写真における明るさ、被写体との距離、地上と空の比率などのわずかな違いが、評価に無視できない影響を及ぼすことも確認された。 砂丘の観光利用に関する調査対象候補地として、モンゴルのKhogno Khaan自然保護区内のElsen Tasarkhai砂丘地と、内モンゴルのBaogutu国家沙漠公園で予備的な聞き取り調査を行った。どちらの場所でも砂丘の拡大を懸念し対策を取る一方で、砂丘を利用した観光も推進していたが、特に中国の「国家沙漠公園」制度は近年の取り組みであり注目すべきと考えられた。これは2013年に始まった制度であり、Baogutu国家沙漠公園は2015年に指定された。国家沙漠公園の設置は、砂漠化地域の生態系回復のみならず、砂漠資源の合理的利用を促し、教育や観光面でも活用しようという取り組みである。公園内での生態保護区の面積は60%以上、観光などに利用可能な沙漠体験区の面積は20%以下と定められている。今後、観光利用の実態だけでなく、保護とのバランスを含めた全体的な管理実態についても調査を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、過去に行った中国とモンゴルでの調査において大量に撮影した写真の中から砂丘景観写真を選択し使用する予定であったが、本年度の予備調査から新たな写真セットを用意する必要性が明らかになった。一方で、中国の国家沙漠公園という、砂丘の関係価値を考える上で注目すべき新しい制度の存在を確認したことにより、当初なかった視点から研究を行う展望が得られた。当初計画よりも作業手順が増えたという意味ではやや遅れているが、研究をより発展させうる発見もあり、全体的には順調と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画の方針に変わりはないが、本年度の予備調査に基づき下記事項を新たに実施する。①新たな景観写真の撮影:露出条件の統一やフレーミングの配慮を行い、景観以外の要素が評価に与える影響を最小化する。②国家沙漠公園に関する調査:内モンゴルの地元政府に対し実施予定である、砂丘の観光利用についての聞き取り調査において、国家沙漠公園に関する質問項目を追加する。
|