近年、国立公園とはどういった制度・空間であるのかという、日本の国立公園のアイデンティティーが揺らぐ中で、国立公園やその計画思想はどういった社会関係のもとに構築されてきたのかを史資料による歴史的分析を通じて明らかにすることを目的としており、特に、自然資源と歴史文化資源をめぐる相克という観点から、国立公園史へのアプローチを行うものである。この目的のために、国立公園史や造園学史に関する資料の収集・分析を行ってきた。具体的には、戦時体制下においては国立公園の計画思想の転換が強いられる一方で「自然公園体系」という国立公園の理念レベルでの精緻化が行われ、この延長線上に戦後の国立公園行政が展開されているが、この事象に関わる歴史資料を収集し、分析を加えた。その結果、1930年代後半以降、国立公園を体系的に全国レベルで展開する段階においうては、都市計画から地域計画を立案しつつあった都市計画行政の中の緑地計画と国立公園行政の中で重なる部分が出てきたこと。現在でいう県立自然公園レベルで具体的な調整が行われてきたことが明らかとなった。加えて戦時体制下へ入る中で、歴史文化資源も公園の資源として重要視されていく過程が明らかとなった。加えて、本年度は、特に、日本の自然風景地は社寺仏閣や信仰空間との関係が非常に深く、歴史文化資源が自然風景地を形作ってきた側面があるため、国立公園の立案者である造園家と神社・神社風致林に焦点をあててる必要性を考え、これに関する資料収集および分析を行い、その成果の発表を行った。
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