研究課題/領域番号 |
18K14488
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
牧田 直樹 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40723086)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細根 / 水ポテンシャル / 針葉樹 / 広葉樹 / 形質 |
研究実績の概要 |
樹木細根の機能は樹種を問わず共通のものであるが、野外で実際に根を観察してみると、その姿は実に様々である。樹木細根系の特性を表す外見・内面の形質データを統合し、種の識別法の確立を行うことを目的とする。また多様な樹種が自生するする混交林において、根系の種ごとの現存量・生産量の定量化し、種多様性と生態系機能の解明を目指す。該年度に実施した研究は、次の疑問に答えることを目標とする。 多樹種において、根系の水分生理機能は系統タイプ(被子、裸子)で区分されるのか? 森林限界に優占する落葉広葉樹のナナカマド (Sorbus matsumurana),ダケカンバ (Betula ermanii) と常緑針葉樹のオオシラビソ (Abies mariesii),ハイマツ (Pinus pumila) の4樹種を対象とし、直径2 mm以下の細根系サンプルを採取した.4種の細根の水ポテンシャルは過度にストレスを受けた状態ではなく,有意な種間差はなかったことから,同一環境下に生育する樹種は同程度の力で水を引き込んでいることが示唆された.水ポテンシャルの制御は,針葉樹2種は浸透調節能のみで行っているのに対し,広葉樹2種は浸透調節能と弾性率の両方で行っている傾向があった.透水性は有意な種間があり,ハイマツが最も水を通しやすい根を持っていた.水輸送フラックスは,針葉樹と広葉樹それぞれで呼吸が高くなるほど高くなる傾向があり,根呼吸は水輸送フラックスを反映する可能性がある.水輸送フラックスと比根長の間には有意な負の相関があり,両者の間にトレードオフがあることが示唆された.水輸送フラックスと根組織密度の間には有意な負の相関があり,道管径が大きいほど密度が低くなるとともに水輸送フラックスが高くなると考えられる.以上より、樹木細根系の水分生理機能の樹種間差を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H31年およびR1年度に計画していた樹種識別の確立を根系の水分生理測定より行い、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
根系および更なる樹種数を増やし、それらのすべての種の根特性を統合し、根の成長や枯死、種の競争、住み分け、物質循環の環境応答といった現象が細根の種/形質の多様性とあわせて考察する。
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