研究課題
樹木細根の機能は樹種を問わず共通のものであるが、野外で実際に根を観察してみると、その姿は実に様々である。本課題では、樹木細根系の特性を表す外見・内面の形質データを統合し、種の識別法の確立を行うことを目的とする。また多様な樹種が自生する混交林において、根系の種ごとの形質の解明を目指す。最終年度は、次の疑問に答えることを目標とする。多樹種において、根系の滲出物放出速度、窒素吸収速度、水吸収速度は種間で異なるのか?多樹種の総炭素滲出速度および一次代謝産物であるアミノ酸・有機酸・糖を定量化した結果、総炭素滲出速度は被子─内生菌のグループが最も高く、一次代謝産物の濃度や組成に樹種間差が認められ、滲出物を介した炭素投資や栄養獲得能力に樹種特異性があることが示唆された。また根滲出物と形態特性の相関性は、形態的な栄養獲得能力に加えて、滲出物がそれを促進、補足する関係にあるためだと考えられる。また、樹木細根による無機態窒素(硝酸態およびアンモニア態窒素)の吸収機能の種間差を直接的に評価した結果、アンモニア態吸収速度は樹種、硝酸態吸収速度は菌共生タイプによって異なった。さらに吸収速度と根特性との関係は、根組織密度で硝酸態吸収速度とアンモニア態吸収速度で逆の相関、根 CN 比では外生菌根種と内生菌根種で異なる関係が見られた。さらに、組織内の水の流れやすさを示す水透過性の直接評価を行った結果、水透過性の平均値は外生菌根種が、内生菌根種と比べて高くなった。以上より、樹木細根系の形質は、樹種特異性をもっていることが明らかとなった。
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