研究課題/領域番号 |
18K14489
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
鶴田 燃海 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 森林総研特別研究員 (90809740)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 雑種不和合性 / サクラ属 / トランスクリプトーム / 防御反応 / 自己免疫 / 生育不全 |
研究実績の概要 |
これまでの健全および生育不全雑種実生における発現遺伝子の網羅的解析(RNA-seq)により、サクラ属の栽培品種‘染井吉野’(Cerasus x yedoensis 'Somei-yoshino')と野生種のエドヒガン(C. spachiana)とを交雑させた際にみられる実生の生育不全が、病原体に対する防御反応と関連した遺伝子群の過剰な発現により引き起こされていると推察された。生育不全雑種実生の葉、子葉、胚軸、および根の部位ごとにRNA-seqを行い遺伝子発現を調べることで、さらなる雑種の生育不全メカニズムの解明を試みた。 シロイヌナズナのpathogenesis-related gene 1 (PR1)と相同性の高い遺伝子、ストレス応答に関わるアブシジン酸受容体PYL-2関連遺伝子群、免疫反応と関連したLeucine-rich repeat受容体ドメインを持つ遺伝子群など、多くの植物の防御反応と関連した遺伝子の高発現が、主に実生の胚軸において顕著に見られた。また、生物的刺激に対する反応(GO:0009607, response to biotic stimulus)および防御反応(GO:0006952, defense response)のgene onthology(GO)も、胚軸にて最も有意にエンリッチメントされることが示された。さらにGO解析からは、細胞のサイクル、成長や分裂に関与する遺伝子の発現が生育不全実生の葉(茎頂部位も含まれる)において低下することが示された。 これらの結果から、サクラ属における雑種実生の生育不全は、防御関連の遺伝子の過剰発現により茎頂分裂細胞を含む主軸の成長が妨げられることにより引き起こされたと考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスによる研究教育活動等の停止期間があったため、実験・解析等に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の中断、計画等の変更を余儀なくされたが、実験・解析ともに概ね当初の予定を達成できた。本年度はqPCRによる検証および次世代シーケンサーデータの解析を継続するとともに、結果の取りまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験・解析の遅れから、qPCR費用および成果の取りまとめにかかる費用を繰り越した。これらを本年度、実験消耗品費、英文校閲費、成果の出版費用等に使用する。
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