研究課題/領域番号 |
18K14491
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 栄治 九州大学, 農学研究院, 助教 (90614256)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 葉緑体光定位運動 / 林床植物 |
研究実績の概要 |
本研究では、異なる生育環境に進化および適応した植物種をもちいて、異なる光環境への適応性と葉緑体の運動性を比較することで、進化や適応の過程で生じた葉緑体の運動性の変化が異なる光環境への適応を制御するか否かを明らかにすることを目的として、研究を行ってきた。 本年度は、同じ属の中に、非常に弱い光の下で生育している種(林床種)や比較的光条件の良いところで生育している種(渓流種)が存在する供試材料を複数パターン用意し、それぞれの植物種の葉緑体の光に対する運動性を解析した。さらに共焦点顕微鏡を用いて、植物の細胞を3次元で観察し、細胞の形や、葉緑体の面積、細胞の体積などのパラメーターを計測することで、細胞の表面に理論上何個の葉緑体が収まるかを算出した。得られたパラメーターの結果から、林床でのみ生育可能な種は、特異的な細胞の形状を示すことが分かった。さらに、林床植物に特異的にみられる細胞は、通常の植物の細胞よりも、形状の変化により、光合成に有効な波長の吸収量が高く、弱光下で光合成を行うえで、非常に効率的であることが分かった。 これらの研究成果の一部は、日本植物学会の年会で口頭発表した。また、現在、投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、解析が進んでおり、想定通りの結果を得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
下層植物は、林床の日陰だけでなく、倒木などによって突然できるギャップによって生じる日照など、異なる光環境に適応して生育する必要がある。そこで、光環境に対する適応性が高い植物種について、葉緑体光定位運動が光環境に応じてどのように変化するかを明らかにする。異なる科に属する、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale:キク科)、オオバコ(Plantago asiatica:オオバコ科)、カタバミ(Oxalis corniculata:カタバミ科)、シロツメクサ(Trifolium repens:マメ科)を供試材料とする。日なた、半日陰、日陰に生育する上記の4種をそれぞれサンプリングし、生育する光環境の違いが葉緑体運動の運動性に与える影響を明らかにする。 さらに、異なる光環境への適応に関する葉緑体光定位運動の寄与を評価するために、林床にのみ生育可能な植物と異なる光環境に適応できる植物種を用いて、植物の生育を大きく左右する光合成の解析を行うことで、葉緑体光定位運動の運動性の違いおよび葉緑体分布の違いが植物の生育にどのような意味をもつのかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の申請では、機器を購入する予定であったが、減額されたため、機器を購入することができなかった。実験をすすめるため、人件費に回したが、キャンパス移転により、雇用が8月になったため、使用額が減った。
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