研究課題
2011年の原発事故により、放射性物質のセシウム137(137Cs)が福島県の森林に大量に飛散・沈着した。樹木の137Cs濃度は、137Cs沈着量が同じ場所でも大きな変動を示していることが知られている。ここで土壌中の137Csの大部分は、粘土鉱物のフレイドエッジサイトと呼ばれる層間の立体構造に取り込まれ、極めて強く固定されている(固定態)。またこれ以外にも、土壌有機物や粘土鉱物の負電荷に静電的に吸着した「交換態」の137Csなどが存在する。交換態の137Csは、量は少ないものの、比較的樹木に取り込まれやすい。ただしこれまでの福島の土壌研究は、全量での137Cs測定などから安定・多量な固定態に注目したものが多く、交換態に関する情報は限られる。そこで本研究では、福島の樹木の137Cs汚染のメカニズムの解明や将来予測を行うために、土壌中の137Csの存在形態およびその時空間変動を明らかにすることを目的とする。これまで分析をしてきた、森林土壌のリター層には、葉や枝、樹皮などの様々な種類・分解度の有機物が存在する。ここで最表層の新鮮有機物について、各種有機物が137Csをどれくらい保持するのかを調べるために、137Csと同じ化学的性質を持つ安定セシウム(133Cs)を用いた吸着実験を実施した。その結果、133Csの吸着率は樹皮などで多く、材などで低いことが明らかになった。併せて、試料に粘土鉱物が含まれると、133Csの吸着率が急増することが明らかになった。またこれらの有機物に吸着した133Csは、水や酢酸アンモニウム溶液によって容易に再抽出することができ、比較的動きやすい形態である可能性が示唆された。
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Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry
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Journal of Environmental Radioactivity
巻: 220-221 ページ: 106306~106306
10.1016/j.jenvrad.2020.106306
https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/saizensen/2020/20200807-01.html