研究実績の概要 |
最終年度の2年目では、1年目に投稿した関連成果論文が学術誌に受理・掲載されるとともに(Nagano et al., 2019)、「Dry-Wet 処理が土壌有機物分解の温度依存性に及ぼす影響」を検証する培養実験を完了した。本実験では、20℃と30℃、2種類の温度条件を設定した。各温度条件で、1年目と同様、Dry-Wet処理条件と水分一定処理条件を設け、両水分条件で培養中の平均水分量が等しくなるよう、火山灰土壌を112日間培養した。本培養実験では、1年目に北茨城の森林で採取した火山灰土壌2種類のうち、1種類を使用した。培養112日間において、30℃の平均CO2放出速度の20℃の放出速度に対する比(Q10)は、Dry-Wet 処理で1.5、水分一定処理で1.7となった。これらの値を、温暖化将来予測における一般的な温度上昇である+2℃に対する放出速度増加率(Q2)に換算すると、Dry-Wet処理・水分一定処理ともに1.1となった。すなわち、1年目の20℃における培養実験で明らかになった「Dry-Wet 処理による土壌有機物分解・CO2放出の明らかな増大」とは対照的に、Dry-Wet処理は土壌有機物分解とCO2放出の実際的な温度依存性に対しては大きく影響しない可能性が示唆された。ただし、この示唆の普遍性については、より様々な土壌を使った更なる検証研究が不可欠である。また、放出されたCO2の放射性炭素同位体存在比(Δ14C-CO2)も一部のサンプルについて測定でき、Dry-Wet処理におけるΔ14C-CO2は水分一定条件における値よりも10‰程度低く、δ13C-CO2の場合と同様、Dry-Wet処理と水分一定処理では、分解された有機物の土壌における平均滞留時間が異なっていた可能性が示唆された。その他、土壌から抽出した微生物DNAの遺伝子配列解析に基づいた微生物群集構造解析も実施した。
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