繊維直交方向に生じた割れが腐朽進行に与える影響を検討するため、繊維直交方向に約1mm幅のスリット加工を施し、木口面の腐朽開始箇所以外をエポキシ樹脂でシールした試験体の腐朽試験を行い、X線デンシトメトリーによる質量減少の分布や強度性能についての検討を行った。 はじめにベイマツ材を用い、寒天培地上のオオウズラタケ培地に板目面・柾目面が接するように置き腐朽試験を実施したところ、一部の試験体でスリットを中心とした質量減少が観察された。特に引張強度の低下した箇所では、必ず質量減少が生じていた。 次に、腐朽開始箇所が海砂上のオオウズラタケ培地と接する状態で腐朽試験を実施した。その結果、スギ辺材を用い試験体と培地の間にメッシュシートを挿入しなかった試験において、スリットが存在する試験体での繊維直交方向の質量減少の進行が速いことが確認された。 最後に、スリットに金属板を挿入した場合の腐朽試験を実現するため、培地との接触を改善した寒天培地やバーミキュライト培地を用いた腐朽試験の検討を行った。その結果、バーミキュライト培地を用いた場合に適当な含水率状態で腐朽が進行することが分かったが、寒天培地や海砂培地の場合と異なり、X線デンシトメトリーによる質量減少の評価が難しいことも明らかとなった。 また、質量減少が強度性能に与える影響を検討するため、局所的な腐朽を施した試験体について、X線CTにより得られる密度分布と曲げ強度の関係を評価した。得られた曲げ強度は、密度に比べて質量減少率との相関が強く、ほぼ等しい重量減少率の試験体において、引張側の質量減少が先行している試験体の強度性能がより低下する可能性についても確認された。 以上より、木材中のスリットにより腐朽進行が促進しうることが明らかとなった。また、強度試験の結果から、局所的な質量減少が大きな強度低下をもたらす可能性が確認された。
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