研究課題/領域番号 |
18K14499
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山内 恒生 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (10805427)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | フラボノイド / クェルセチン誘導体 / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
人類は,400万年という長い歴史の中で,身のまわりの植物,動物,鉱物の全てを含む天然産物から病気と戦う武器として数多くの薬を見つけ,各地の文明の発展と共にその知識を大切に伝承している。樹木を含む薬用植物には多彩な成分が豊富に含まれるためにその生理機能や利用法も多様である。近年ではポリフェノールをはじめとした植物の二次代謝成分の生体に与える健康効果について数多くの報告がされ注目の的となっている。植物中の有用成分の単離,構造決定,あるいは作用機序の解明は食品,医薬,化粧品などの業界において強く望まれている。本研究で注目したのは,代表的なポリフェノールであるquercetinの抗癌活性である。 Quercetinは樹木や薬用植物,食品に広く含まれている代表的なフラボノイドの一種であり,多くの生物活性が報告されている。その中でもquercetinは様々な癌細胞に対して転移の原因となる遊走と浸潤を阻害することが知られている。これまでに合成したquercetin誘導体を用いて,メラノーマ細胞の転移に与える影響を調査したところ,quercetinをメチル化体とすることでquercetinよりもはるかに強力な遊走阻害活性を示すことが明らかとなった。この活性の違いが,メラノーマ細胞内のタンパク質と本化合物との相互作用の変化によるものであると推測した。そこで本研究ではmethylquercetinと結合するタンパク質の単離同定と,生きた細胞内で「1分子イメージング」技術を用いてタンパク質と本化合物の相互作用を調査することで,分子レベルにおける作用メカニズムの解明を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在methylquercetinの7位選択的にビーズを結合させることに成功している。また,この合成したビーズを用いてプルダウンアッセイを行った結果,methylquercetinと結合するタンパク質のバンドを複数確認した。これらのタンパク質を酵素消化しMascot Searchによりタンパク質の同定を試みた結果,いくつかのタンパク質の候補が得られた。このタンパク質の同定はさらなる確認作業が必要であるが,推定されるタンパク質が得られたことは一つの進展であり,当初の計画と比較してもおおむね順調であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
得られたmethylquercetinと結合するタンパク質の同定をさらに進める。位置選択的ビーズの導入をmethylquercetinの他の部分でも同様に試み,得られるタンパクを確認することで,結合タンパクとmethylquercetinの構造との相関を調査する。同定したタンパク質及びquercetin誘導体を蛍光標識し,「1分子イメージング」技術により,生きた細胞内における両者の相互作用を観察することで,quercetin誘導体の癌遊走阻害メカニズムの解明を試みる。
|