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2019 年度 実施状況報告書

肉食魚は草食性を獲得できるか?-草食魚の嗜好性解明-

研究課題

研究課題/領域番号 18K14508
研究機関東京海洋大学

研究代表者

石川 雄樹  東京海洋大学, 学術研究院, 博士研究員 (50638004)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードソウギョ / 味覚受容体 / 近赤外蛍光イメージング法 / カルシウムイメージング法
研究実績の概要

今年度の検討においては,昨年度確立した近赤外蛍光イメージング法によりソウギョが植物性試料を認識し摂食行動に関与する成分の探索の特定を行った.試料には昨年度に引き続きレタス葉を使用した.レタス葉に含まれる成分を抽出後,水-酢酸エチルの二相分配で成分を分配した.セルロースベースの飼料を作製し,無添加飼料をコントロール区とし,実験区には分液した水相または有機相成分を添加し,コントロール区・実験区飼料はそれぞれ異なる波長の蛍光標識を行った.コントロール区飼料・実験区飼料を混合しソウギョに与え選択性試験を行ったところ,コントロール区飼料は口にしても吐き出し摂食しないのに対し,水相,有機相いずれのレタス葉成分を含む実験区飼料においてもコントロール区と比較し選択的に摂食する傾向が認められた.そのためソウギョの草食成分認識機構には極性の異なる複数の成分が関与していることが考えられた.
草食性魚類の摂食成分認識について,末梢レベルにおける評価を付け加えることを目的として,魚類の味覚受容体発現組織を用いたライブセルイメージング応答評価系の構築が可能かについて検討した.まず味細胞を多く含む組織としてゼブラフィッシュのmaxillary barbel(ひげ組織)を用い培養条件の検討を行った.その結果,maxillary barbel上皮由来の細胞をウェルプレート上に接着・増殖可能な培養条件を見出した.定着した細胞は10日以上維持可能であった.7日目においてPCR法による味覚受容体の発現を確認したところ,T1R1など複数の味覚受容体遺伝子において発現が認められた.またカルシウムイメージング法により呈味成分に対する応答を評価したところ,アミノ酸添加によって細胞内カルシウムイオン濃度上昇を示す細胞が確認された.
以上より魚類の摂食成分認識における末梢レベルでの応答評価が可能であることが示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一部当初の研究計画と比べ未達成の項目部分があるものの,研究を進める中で当初の研究計画には無かったものの新たに発案した評価系により,動物個体レベルだけでなく末梢レベルで魚類の摂食成分認識を評価可能である目処が付いた.評価法は草食性魚類に関わらず魚類全般への適応可能性を有することを鑑み,魚類の摂食成分認識評価について想定していなかった研究の前進があったと考え,総合的におおむね順調と判断した.

今後の研究の推進方策

植物性試料の選択嗜好性に関与する成分についてはさらに分画を行いLC-MS/MS等による機器分析及び網羅的解析手法により可能な限り明らかにする予定である.また今年度に検討した味覚受容体発現組織の培養を用いた評価法について,ソウギョ口唇部分についても培養を試みたところ,ゼブラフィッシュ同様にウェルプレート上での細胞接着・増殖が確認された.そのため今後は,培養中における味覚受容体の発現確認及びカルシウムイメージングによる呈味成分応答性の有無を評価し,末梢レベルにおける植物嗜好性に関わる成分の応答評価への応用可能か検討する.これらの方法により最終的に受容に関わる分子について特定し生化学・分子生物学的手法を用い検証を行う予定である.

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画と比較し一部の項目において遅れが生じた.そのため今年度行う予定だった分子生物学的手法を用いた検討にかかる経費を次年度に繰り越すこととした.

備考

昨年度に引き続きTBSラジオ「アフター6ジャンクション」の特集コーナー(20:00-20:50ごろ)において近年の味覚研究について解説を行った.その内容の一部として「嗜好性研究」や「草食性魚類」にも触れることでアウトリーチ活動を行った.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Leptin promotes the fat preference associated with low-temperature acclimation in mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Reiko Nagasaka, Hazuki Nakachi, Yuka Onodera, Yuki Ishikawa & Toshiaki Ohshima.
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 84 ページ: 1250-1258

    • DOI

      10.1080/09168451.2020.1732186

    • 査読あり
  • [学会発表] ローズマリー抽出物の経口投与によるコイのDactylogyrus minutusの防除に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      鳥飼昇平,石川雄樹,大島敏明,二見邦彦,舞田正志,片桐孝之
    • 学会等名
      令和2年度日本魚病学会春季大会
  • [学会発表] ゼブラフィッシュにおける水温によるアミノ酸嗜好性の変化2019

    • 著者名/発表者名
      林風咲子,石川雄樹,長阪玲子
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 乳酸による食嗜好性の変動2019

    • 著者名/発表者名
      末武綾子,長阪玲子,石川雄樹
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 沖縄県産アオリイカのイカスミの女性ホルモン様作用について2019

    • 著者名/発表者名
      小田部里紗,金城春菜,石川雄樹,長阪玲子
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 腸内細菌叢と食嗜好性の関連についての探求2019

    • 著者名/発表者名
      宇賀神道彦,永野夢紡,石川雄樹,長阪玲子
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] S-Adenosyl-L-methionineの麹菌発育促進効果2019

    • 著者名/発表者名
      佐々木駿祐,倉橋敦,藤井力,金井宗良,石川雄樹,大島敏明
    • 学会等名
      第19回糸状菌分子生物学コンファレンス
  • [学会発表] 環境温度による腸内細菌叢変動が及ぼす食嗜好制御機構の探索2019

    • 著者名/発表者名
      宇賀神道彦,永野夢紡,石川雄樹,長阪玲子
    • 学会等名
      第4回食欲・食嗜好の分子・神経基盤研究会
  • [備考] 味覚研究特集 パート2(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」10月7日)

    • URL

      https://www.tbsradio.jp/417492

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公開日: 2021-01-27  

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