研究課題/領域番号 |
18K14509
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中山 直英 東海大学, 海洋学部, 特任助教 (40781894)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 深海魚 / 分類学 / 生物多様性 / 形態学 / 動物地理学 |
研究実績の概要 |
研究期間を1年延長した令和3年度は,日本周辺の北西太平洋におけるソコダラ科魚類の動物地理を検討し,この海域における本科魚類の垂直分布と水平分布のパターンを明らかにするともに,本研究課題の対象であるトウジン属の分布特性を検討した.研究には,昨年度出版した分類学的モノグラフのデータを活用し,種の在不在データに基づきクラスター解析を行った.解析の結果,日本周辺のソコダラ類相は,水深1100mを境に上部と下部で属および種レベルの構成が大きく異なり,トウジン属は上部を特徴づける主要な構成メンバーであることが明らかとなった.また,日本列島周辺の15海域を水平的に区分し,調査海域における本科魚類の水平分布の境界や,分布を規定・制限する要因を検討したところ,上記の15海域におけるソコダラ類相は,1)日本海,2)北日本の太平洋岸沖+オホーツク海,3)東シナ海+南日本の太平洋岸沖,および4)九州-パラオ海嶺の4つグループに大別されることが判明した.トウジン属はこのうち3)の海域で種多様性がとくに高く,緯度が上昇するほど出現種数が減少することが明らかになった.これらの検討の結果,トウジン属を含む多くのソコダラ科の水平分布は,水温や海流などの物理的な要因だけでなく,各グループの生息に適した海底環境の不連続な分布や,最終氷期以降の海洋環境の変遷などの影響を色濃く反映していることが示唆された.なお,上記の成果は英文専門書の1章として出版された.一方,年度の後半からは,進捗が滞っていた分子実験に着手することができた.また,昨年度までに明らかになった未記載種と考えられる種について,記載論文の執筆を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題に関する論文は着実に出版され,データも着実に集積しているものの,コロナ禍の影響で標本調査が十分に行えておらず,予定していた研究内容を完了するには至っていない.また,昨年度まで進捗が滞っていた分子実験に着手することができたものの,分析・解析を終えることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
研究機関を1年再延長し,引き続き本研究課題を継続して,プロジェクトの完了を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,当初から予定していた研究計画を完了できていないため.残金は,おもに標本調査や借用標本の返却の費用に充てる.
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