本研究課題の最終年度となる令和4年度は、研究期間を通じて明らかになったトウジン属の未記載種や、学名の同異に問題が認められた名義種を、おもに外部機関からの借用標本に基づいて検討し、それらの記載・再記載を中心とした分類学的整理を、種群単位でとりおこなった。また、各種群の標徴を、これまでの形態および遺伝的解析の結果を踏まえて再検討した。一方、前年度までの調査・研究により、日本周辺の北西太平洋に分布する種の分類学的整理や、この海域における各種の分布特性に関する解析が終わっていたため、本年度はこの海域に接続する西部太平洋の熱帯域(おもに東南アジアからオーストラリア北部)から得られた標本を重点的に調査し、各種の分布の境界(南限・北限など)を探るとともに、各海域における本属魚類の種組成を把握した。さらに、駿河湾や土佐湾を中心とした南日本沿岸沖から、トウジン属や近縁グループの大型標本を追加で入手する機会に恵まれ、比較標本を含む研究材料を補充した。本年度実施した調査・検討のなかで、トウジン属以外のグループについても、未記載種や新産地などの分類学的発見があり、投稿論文を随時準備した。 なお、本年度の初めの段階では、コロナ禍の影響で遅れていた外部での標本調査と、昨年度からの継続である分子実験を、年度後半にまとめて実施する予定であった。しかし、研究代表者の所属機関が年度途中に変更になり、事務作業、引越し、研究環境の変化などの影響により、予定通り研究を進めることができなかった。
|