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2018 年度 実施状況報告書

沿岸域における有機炭素隔離能力を決定付けるキープロセスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K14511
研究機関長崎大学

研究代表者

高巣 裕之  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 助教 (00774803)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード溶存態有機炭素 / 難分解性有機物 / 易分解性有機物
研究実績の概要

本研究は、大気中の二酸化炭素濃度上昇の緩衝作用を果たしている海洋沿岸域の有機炭素隔離機構において、隔離能力を決定付けるキープロセスと考えられる「有機炭素分解者の制約による溶存態有機物の残存仮説」を検証することを目的としている。
長崎県沿岸域における溶存態有機炭素の濃度や質的情報、分布や分解性に関する情報は極めて限られているため、本年度はまずそれらの基礎的な情報を集めることを目標とした。有明海奥部海域において、2018年5月から8月にかけて採水し、溶存態有機炭素濃度、質的情報および分解性について調査を行った。溶存態有機炭素濃度は、他海域の報告値と比べて高かった。また、溶存態有機炭素濃度は月ごとに違いが見られ、5月は濃度が最も低く、7月および8月は同程度であった。質的な評価については、三次元励起蛍光スペクトル法を用いた。その結果、易分解性有機物とされるタンパク質 (様物質) 濃度は他海域での報告値と同程度であった。一方で、難分解性有機物とされるフミン酸 (様物質) 濃度は、調査期間を通じて他の海域の報告値よりも著しく高かった。このことは、有明海の水柱には難分解性有機物が大量に存在していることを示しており、炭素隔離能力が高い海域であることが示唆された。溶存態有機炭素の分解性に関しては、培養実験により評価した。その結果、数日中に分解される易分解性画分の有機炭素は、全有機炭素の2.8-7.6%程度であることが明らかとなった。この結果は、有明海の水柱中において難分解とされるフミン酸様物質が極めて高濃度で存在していることと整合的である。本研究の成果は、既に責任著者として論文を公表している (内野ら, 印刷中, 水環境学会誌)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本実験に必要となる長崎県沿岸域における溶存態有機炭素の濃度や質的情報、分布や分解性といった基礎的情報の収集に関しては、年度内に概ね完了し、その結果を論文として公表した点を考慮すると、研究自体の進展は概ね順調であると言える。しかし、当初予定していた有機炭素の分解に及ぼす栄養塩添加の影響を調べる培養実験を初年度は行うことができなかった。そのため、進捗状況を「やや遅れている」の区分に相当すると考えている。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、有機炭素の分解に及ぼす栄養塩添加の影響を調べる培養実験を、情報の揃った有明海の試料を用いて実施する。初年度に行った調査により、有明海は大潮時に栄養塩類が枯渇することが明らかとなり、この時に有機炭素分解が栄養塩制限を受けている可能性があるため、培養実験に大潮時の試料を用いることが適当であると判断し、実験に用いる予定である。実施時期としては、季節を考慮し、5月、8月、10月に実験を行い、実験終了後、直ちに分析と解析を行い、その成果を日本海洋学会において発表する。また、実験結果を年度内に論文にまとめ、国際学術誌に投稿する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Influence of water discharged from a reservoir on reclaimed land into Isahaya Bay (Kyushu, Japan) on the regeneration of NH4+ in the water column2019

    • 著者名/発表者名
      Takasu, H, Komorita, T, Okano, T, Kuwahara, M, Hoshimoto, K
    • 雑誌名

      Jurnal of Oceanography

      巻: 75 ページ: 299 - 304

    • DOI

      doi.org/10.1007/s10872-018-0503-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 有明海奥部における酸素消費に対する水柱中の有機炭素分解の寄与2019

    • 著者名/発表者名
      内野宏治, 猪股はるか, 田原沙紀, 高巣裕之
    • 雑誌名

      水環境学会誌

      巻: 42 ページ: 195-200

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 大村湾におけるアカクラゲ (Chrysaora pacifica) 由来DNAの動態2019

    • 著者名/発表者名
      高巣裕之, 猪股はるか, 内野宏治, 田原沙紀, 森康一郎, 野添裕一, 秋山仁
    • 学会等名
      第48回 長崎県生物学会
  • [学会発表] 諫早湾における調整池高濁度排水による有機物負荷が水柱のアンモニア態窒素再生産速度に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      高巣裕之, 岡野孝哉, 桑原未貴, 星本啓太, 小森田智大
    • 学会等名
      日本海洋学会
  • [学会発表] 三陸沖における水塊の起源と原生生物の分布特性2018

    • 著者名/発表者名
      福田秀樹, 伊知地稔, 高巣裕之, 楊燕輝, 佐藤菜央美, 永田俊
    • 学会等名
      日本海洋学会

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公開日: 2019-12-27  

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